工具の切削面の刃先の切れ味が悪くなると、加工面の品質が悪化したり、加工時間が増加したり、不良品が増加したり、工具寿命が短くなるなどの問題が発生することがあります。本記事では、その原因や測定方法、維持方法、対策について解説します。
切削工具の刃先の切れ味が悪くなる原因として、切削時の摩耗や熱影響、不適切な加工条件、過剰な負荷、素材の不均一性、刃先材質の不適切な選択などがあります。
刃先の切れ味が悪くなると、摩擦や熱が発生し、工具に負荷がかかることで、工具摩耗や異常発生が起こります。また、切削時の振動や加工時間の増加なども、工具摩耗や異常発生を促進します。
刃先の切れ味は、一般的に目視での確認や手触りでの感触などで判断されますが、より精密な測定には専用の器具を使用します。代表的な測定器具には、光学式の顕微鏡や形状測定器、力計、音響測定器などがあります。
切れ味の測定に必要な器具には、光源、光学系、目盛り、スライドなどがあります。使い方については、測定器具の種類によって異なりますが、基本的には、工具を固定し、測定器具を工具に接触させて測定します。
刃先が鈍くなった場合、再研磨することによって再度使用可能にすることができます。再研磨には、研削機や研削砥石などの専用の工具が必要です。研削砥石の選定や研削条件の設定には、刃先材質や形状などを考慮する必要があります。
刃先が再研磨によって回復できない場合、交換することが必要になります。刃先交換には、工具種類やホルダを使用してるケース等によって、方法が異なりますが、一般的には交換用の刃先を購入し、工具に取り付けることによって交換します。交換用の刃先を選定する際には、材質や形状などを工具の仕様に合わせて選ぶことが重要です。
刃先の切れ味が悪くなった場合は、切削条件を見直すことが必要になります。切削条件には、回転数や送り速度、切削深さなどが含まれます。これらの条件を最適化することで、工具の負荷を軽減し、刃先の磨耗を抑えることができます。
切削液は、切削時に刃先と材料の摩擦熱を冷却し、摩擦係数を低下させる役割を持ちます。切削液の使用方法や種類を見直すことで、刃先の磨耗を軽減することができます。特に、高硬度材料の切削では、切削液の性能によって刃先の磨耗が大きく変化することが知られています。
刃先の材質は、使用される材料の種類に応じて異なります。刃先が適切に選択されていない場合、工具摩耗・異常発生が起こる可能性があります。特に、高速度での切削においては、高い耐摩耗性が求められるため、より優れた材料を使用することが必要です。
一般的に使用される刃先材料には、ハイス(高速度度鋼)、セラミック、CBN(窒化ホウ素)、ダイヤモンド、ステンレス鋼などがあります。これらの材料は、それぞれ独自の特性を持っています。例えば、ハイスは、高温下でも耐摩耗性が高く、セラミックは、硬度が高く、優れた耐熱性があります。
刃先材質の選択は、切削条件に応じて行う必要があり、使用する材料の種類、硬度、熱処理の有無、切削速度、加工精度、材料の摩耗性などを考慮し、適切な刃先材料を選択することが重要です。
これらの対策を講じることで、工具摩耗・異常発生を予防し、製造効率の向上や、製品品質の向上を実現することができます。また、製造現場でのトラブルを事前に予測し、予防することも重要です。例えば、工具の寿命を予測し、交換タイミングを計画的に設定することで、突然の停止や生産ラインのダウンを回避することができます。そのためにも、切削工具の状態監視や、予防的なメンテナンスなどを積極的に実施することが求められます。
切削工具の刃先の切れ味が悪くなることによる工具摩耗・異常発生を防ぐには、正しい測定方法や維持方法を実践し、適切な切削条件を設定することが必要不可欠です。また、常に最新の情報や技術の習得、予防的なメンテナンスなどを行うことで、製造現場での生産性向上やコスト削減につながることが期待できます。
切削工具の刃先の切れ味が悪くなることによる工具摩耗・異常発生に対する対策について、刃先の切れ味の測定方法、刃先の維持方法、刃先が悪くなったときの対策、そして、刃先材質の見直しによる対策について解説しました。
上述の光学式の顕微鏡や形状測定器、力計、音響測定器といった測定器は、その精度から、研究や実験用途での利用では非常に便利です。その一方で、工具の取り外しを前提にした利用となるものが多いため、実際の稼働中の生産ラインでは、活用が難しいケースもあるかもしれません。検討の際には、用途に応じた計測機器、計測方法を選定するようにしましょう。工具管理・監視によって、自社工場の生産効率の改善を目指しましょう。