切削加工をした製品の表面は、平面に見えても目視で確認できないような高さ・深さ、また間隔の異なる山や谷が連続しています。この連続する微小な起伏を「表面粗さ(あらさ)」とよびます。 近年工業製品の小型化や高度化が求められる中、その部品に対しても精度の高い加工や仕上げが求められています。 この記事では切削加工における表面粗さ悪化の原因と、その対策について解説します。
表面粗さが悪化することで、摩擦抵抗の発生や気密性・油密性の悪化、切削面の光沢不良などさまざまな課題が発生します。それぞれの課題について解説します。
金属同士を組み合わせた場合、表面粗さが大きいとその表面に摩擦抵抗が生じ、機械の摺動(すべり)に支障をきたす場合があります。 また組み合わせた金属の間に生じる隙間が大きくなり、気密性や油密性が悪化します。
金属を滑らかに磨き上げると、金属光沢が生じます。一方で切削時の表面粗さが大きいと、金属光沢が失われてしまい、ザラザラとした質感となります。あえてザラつきのある質感を狙って加工することもありますが、多くの場合表面粗さの影響で見た目が悪化してしまうため注意が必要です。
寸法精度が厳しく切削加工時に公差内に入っていない場合、追加工を行う必要があります。
しかし表面粗さが大き過ぎると、粗さを改善するための取り代が無くなってしまうため、加工不良となってしまいます。
切削加工の仕上げ工程で表面粗さが悪化してしまう主な要因を3つ紹介します。
表面粗さの悪化を防ぐためには、切削工具の選定や切削時の条件設定で対策をする必要があります。
工具選定による対策には、工具の表面をコーティングする方法や、インサートのコーナRの大きさ・すくい角が大きい工具・ワイパーインサートの選定などが挙げられます。
表面粗さの原因となる構成刃先の発生を抑えるためには、コーティングされた工具の選定が効果的です。 構成刃先は切削工具とワークの組み合わせによって発生のしやすさが変わるため、コーティングをすることで発生しにくくなります。構成刃先の発生を抑えられれば、表面粗さの悪化を防ぐことが可能です。
コーナRを小さくすることで切削時の抵抗を抑え、表面粗さの悪化を抑えることができます。 またすくい角を大きくすることで、表面粗さの悪化につながる工具の摩耗を抑えることが可能です。
通常、送り量を大きくすると表面粗さが悪化してしまいますが、ワイパー刃がついているワイパーインサートを採用することで、送り量を大きくしても表面粗さの悪化を抑えることができます。 また送り量を大きくできれば切削工具の摩耗も抑えられ、工具の寿命を伸ばすことも可能です。
表面粗さの悪化を防ぐために、切削条件で抑えておくべきポイントは「送り量を小さくすること」と「切削点の冷却を行うこと」です。
送り量を大きくすると一刃あたりの加工量が大きくなり、表面粗さは悪化します。 反対に送り量を小さくすることで、精度の高い加工が可能になり表面粗さの悪化を抑えられます。ただし加工速度が遅くなるため、生産性に影響を与えないような配慮が必要です。
表面粗さに悪影響を与える構成刃先は、切削点の温度が上昇することで発生しやすくなります。 クーラントを使用することで、温度の上昇を抑えることに加えて、潤滑性を向上できるため表面粗さの悪化を防止することが可能です。
この記事では切削加工における表面粗さ悪化の原因と、その対策について解説しました。 表面粗さは寸法精度の良し悪しだけでなく、摺動や摩擦による耐久性など、機械部品の性能にもつながります。 表面粗さをコントロールし、付加価値の高いものづくりを目指していきましょう。