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PMMA樹脂(アクリル)物性と用途、取扱い方法について解説

PMMA樹脂(アクリル)物性と用途、取扱い方法について解説

injection-molding

PMMA樹脂とは

PMMA樹脂とは、プラスチックの中で最も透明で、ガラスよりも透明性に優れています。耐候性や、耐衝撃性、電気特性に優れ、成形加工性、寸法安定性も良いことから、様々な分野で使用されます。

一般的なPMMA樹脂の特性は、下記の通りです。

  ・透明性が極めて高い

  ・耐候性が良い

  ・機械的特性に優れる

  ・電気的性質に優れる

  ・加工性が良い

  ・寸法安定性が高い

性質 / 特性

性質/ 特徴 備考
分子構造 非結晶樹脂
収縮率 小さい 0.2~0.6%
透明
ガラス転移温度 高い 70〜100℃
耐衝撃性 非常に強い
耐熱性 70〜90℃
耐候性 非常に良い
電気的性質 優れた電気絶縁性をもつ
耐薬品性 弱アルカリには弱い
寸法安定性 成形しやすい
機械特性 強い
成形品の外観 透明性が非常に良い

代表的な用途

PMMA樹脂を用いて、射出成形される成形品の例には下記があります。自動車や電化製品、建築材料まで、多岐に使用されています。

 ・自動車部品・ヘッドライトカバー、テールランプカバー、メーターカバー

 ・電化製品:携帯電話用導光板、バックライトパネル、照明部品

 ・建築材料:看板、ガーデニング材、波板

PMMA樹脂の特徴を活かした用途

PMMA樹脂は、透明性が極めて高いことから、主に透明カバーや各種レンズなどの外装部品として使われます。耐候性、電気的性質に優れ、寸法安定性の良さから、幅広い分野で使用されています。自動車部品、電化製品では、特に電気絶縁性が求められる箇所を担います。

PMMA樹脂の成形加工時におけるポイント

PMMA樹脂を射出成形する際には、原料の予備乾燥と金型(鏡面仕上げ)の取扱い方法がポイントになります。

予備乾燥で考慮すべきこと

予備乾燥が不足していると、成形品にシルバーが発生します。予備乾燥は、適切な乾燥温度と乾燥時間を厳守することが重要です。

 ・適切な乾燥温度:80℃~90℃

 ・適切な乾燥時間:4時間~6時間

また、予備乾燥の際、細かな注意点として、下記にも留意するようにしましょう。

 ・70℃以下で長時間乾燥を行っても、効果がありません。

 ・100℃以上で乾燥すると、ペレット同士がくっつき固まってしまいます。

 ・ホッパーでの吸湿を防ぐ為、箱型乾燥機から運んで投入するよりも、ホッパードライヤーの使用がおすすめです。

 ・湿気の多い環境では、除湿乾燥機や、真空乾燥機など、乾燥能力の高い装置が有効です。

金型(鏡面仕上げ)の取扱い方法で考慮すべきこと

PMMA樹脂の1番の特徴は、透明性です。透明性を最大限に活かすには、金型表面の鏡面仕上げを傷つけないことが重要です。特に生産立上げ時の防錆剤の拭き取りは、製品部を傷つけないように気を付けましょう。誤って傷をつけてしまうと、傷がそのまま成形品に転写されます。

生産立上げ時は、下記の手順で防錆剤を落としていきます。

鏡面仕上げ金型 防錆剤の拭き取り手順

1. ウエスにて、製品部以外を拭き取る。

2. 鏡面仕上げされた製品部は、触らない。

3. コットンにて、パーティングライン部を拭き取る。

なお、防錆剤は、立ち上げから数ショットで消えていきますので、鏡面仕上げの製品部は触れないように気をつけましょう。立ち上げ後、成形品の表面に傷がないことを確認してから、良品取りをスタートしましょう。

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成形不良時における対策ポイント

PMMA樹脂の特性に合わせた成形条件出しが必要になります。よく発生する不良とその対策ポイントは以下の通りです。

シルバーの原因と対策

シルバーとは、材料に含まれる空気やガスが成形品の表面上に現れ、筋状の模様になる事象です。シルバーの原因と対策方法は下記の通りです。

材料乾燥不足によるシルバーは、再乾燥が必要

シルバーの原因として1番多いのは、材料の乾燥不足です。

PMMA樹脂の最適乾燥時間

 ・乾燥温度:80℃~90℃

 ・乾燥時間:4時間~6時間

立ち上げパージする際、パージ球全体に無数の泡状の気泡がある場合は、材料乾燥不足が原因です。材料の乾燥を再度行うことで改善します。

部分的なシルバーには、サックバック量を減らすことで改善

サックバック量が多いと、エアーを巻き込んでしまいシルバーの原因となります。サックバック量を、0.5〜1㎜単位で調整することで改善します。

射出速度が速い箇所のシルバーは、射出速度を遅くする

射出速度が速い箇所で、シルバーが発生することがあります。これは、射出速度を遅くして、ゆっくり充填させることで改善します。

または、シルバーが発生している箇所の速度を低速にして、発生箇所を過ぎたところで、中~高速にする多段階制御も有効です。特に、製品形状が複雑な金型において、リブやボスを越えた周辺にシルバーが発生している場合に有効です。射出速度を極端に低速にすると、速度変化位置において、湯ジワが発生したり、流動末端において、ショートが発生しますので、注意が必要です。

フローマークの原因と対策

フローマークとは、成形品の表面に溶融樹脂が流れた跡の模様が残ってしまう事象です。主にゲート付近に発生します。

下記の3つの方法で改善します。

1. ゲート通過後の位置の射出速度を上げる

一般的に樹脂はゲートを通過する時、射出速度が遅くなると、フローマークが発生します。射出時の多段制御にて、ゲート通過後、射出速度を上げることで改善します。射出速度を高速にするとジェッティングが発生する可能性があるので、ゲート通過後の射出速度をピンポイントで設定することが有効です。

2. 射出速度で改善しない時は、金型温度を上げる。

金型温度を上げることにより、キャビティー内の流動性が上がります。一気に温度を上げるとバリが発生する可能性があるので、5℃刻みで調整することがポイントです。

注意点としては、金型温度を上げると金型が膨張し、高圧型締め位置が変わりますので、金型温度を変更後、型締力調整を再度行うと良いでしょう。

3. 上記で改善しない時は、樹脂温度を上げる。

上記を試しても改善されない場合は、樹脂温度を上げると樹脂粘度が下がり、流れやすくなりフローマークが改善します。流動性が良くなる為、バリに注意が必要です。

注意点としては、樹脂温度を上げすぎると樹脂が分解してシルバーが発生する可能性があるので、5℃刻みで調整すると良いです。

傷の原因と対策

傷とは、外部からの摩擦や圧力によってできる二次的な外観不良です。製品の入れ方や、輸送時に傷になることがほとんどですので、必要以上の箱詰めや、輸送時に注意が必要です。

下記の3つの方法で改善します。

1. 箱への入れ方を工夫する

梱包箱に成形品を入れすぎると、当たりが強くなり傷が発生します。梱包箱に入れる場合は、成形品を抱き合わせて入れるようにすると傷が改善されます。入り数は製品同士が摩擦や打痕にならないように、余裕をもって入れることがポイントです。

緩衝材を使用する

隙間がありすぎて、梱包内で製品が暴れてしまう時は、製品の間に緩衝材を入れて、製品を保護します。傷は改善されますが、梱包コストが上がりますので、事前に客先に相談しましょう。

輸送テストを行う

量産前に、輸送テストをすることで、傷の流出予防ができます。

入れ方や員数の異なる何種類の梱包サンプルを作り、トラックの荷台にのせて輸送した後、成形品の傷の有無を検証を行うことで、適正な梱包仕様を決めていきます。

まとめ

PMMA樹脂は透明性が極めて高いことから、透明カバーや各種レンズの外観部品として幅広く使用されています。PMMA樹脂の取扱い方法や成形加工時のポイント、よく発生する不良について説明しました。予備乾燥や金型(鏡面仕上げ)の取扱い方法は特に注意して作業すると良いです。上記例のような要素を考慮し、より生産性の高い成形加工を目指しましょう。