ピンホールは、針で開けた様な小さな穴のことを言います。射出成形加工におけるピンホールは、成形品の表面に穴が開いている状態を指します。メッキや塗装などの2次加工がある製品のピンホールは、二次加工における不良原因になります。また、薄肉部に発生するピンホールは、貫通穴になることがあります。特に液体用容器の成形においては、内容液がリーク等、重大不良に直結します。
射出成形加工におけるピンホールが発生しやすい箇所は、一般的に下記の3つが挙げられます。
さまざまな要因で、製品表面にピンホールが発生します。下記に代表的な例を挙げます。
・製品表面にできた小さな気泡に穴が開く
・シルバーが発生し、その表面に小さな穴が開く
・金型表面が荒れ、そのまま製品に転写される
充填された樹脂が、袋小路になる箇所は、ガス抜けが悪いため、抜けきれなかったガスが小さな気泡になり、表面で潰れてピンホールになることがあります。
ピンゲート金型、また、ホットランナー(ゲートブッシュ)金型は、ゲート切れが悪くなると、製品部がむしれてしまい、ピンホールや貫通穴になることがあります。
射出成形加工におけるピンホールの発生要因は、大きく分けて、成形条件と金型の2つです。
成形条件が要因で、ピンホールになる代表的なケースとその対策は下記の3通りあります。
成形品の表面、袋小路に発生するピンホールの原因の1つは、ガス抜けが悪いことです。充填時に巻き込んだガスが、製品表面にピンホールとして発生します。事象箇所をよく観察して、事象箇所の充填速度を遅くするか、多段速度で充填することで改善が見込めます。
金型開き時のゲート切れが悪くなると、ゲートがむしれ、製品面がピンホール・貫通穴になることがあります。ピンゲート型やHR型は型開動作に連動し、ゲートが切れるので、切れの直前から型開速度を下げて(反対に上げて)みることで改善することがあります。
金型が要因でピンホールになる代表的なケースは下記の2通りです。
金型表面の荒れに起因するピンホールが発生した場合は、金型の修理が必要となります。金型表面の腐食はそのまま製品部に転写されます。金型の腐食によるピンホールは、磨き直しや入れ子の作り直し等、根本的に金型の腐食を直さなければ直りません。納期、コストを考慮し、計画的にメンテナンスをしていきましょう。
ガス溜まり部にガスベントを追加することで、ガス抜けが良くなり、ピンホールの改善が期待できます。金型の事象箇所部分を入れ子にすることで、ガス抜けが大きく改善することがあります。なお、この対策を検討する場合、入れ子にすることで、製品面に金型の入れ子線が転写されてしまうため、外観・機能要求を事前確認することが必要です。
ピンホールは機能に関わる重欠陥です。塗装、メッキなど2次加工のある製品は、外観不良になります。特に容器の貫通穴はリークに繋がります。
上記に解説しました発生要因を管理しながら、あわせてピンホール不良を流出させないことが重要です。
立ち上げ時は、捨てショットの成形品が混ざらないように徹底します。ピンホールは、流動が悪い箇所、袋小路部、ゲート部など様々な場所に発生します。事前に準備している作業標準書のポイント、基準サンプルとよく見比べて、立ち上げ時に、ピンホールの無い事を確認することが重要です。目に見えない小さなピンホールは、拡大鏡や、2次元測定器などを使用し、的確に検知していきましょう。
人間の集中力や目視検査には限界があり、見落としや作業のバラツキは避けられません。こうした問題が、製造現場で課題視される場合、人間の目視検査に変わり、検査装置を導入することも選択肢です。例えば、放電式のピンホール検査機を用いることで、それぞれの製品に高電圧の電流を流し、貫通穴の有無を確認できます。成形機の横に装置を配置し、毎ショット、製品のピンホールを検査することでピンホール流出を機械的に予防可能になります。
ピンホール関連して、不良発生要因、ポイントの解説・不良流出対策についてまとめました。ピンホールは成形不良の中でも、重欠陥です。発生対策、流出対策をしっかり実施し、不良を作らないシステム作りを目指しましょう。