ポリウレタン樹脂とは、弾力性、クッション性に優れている合成ゴムの1種です。PUやUと表記され、熱硬化性と熱可塑性の両タイプがあります。建築材の断熱フォームや、シューズのソール、衣類など、さまざまな成形加工法を用いて、幅広い分野で使用されています。
一般的なポリウレタン樹脂の特性は、下記の通りです。
・弾力性に優れている
・柔軟性がある
・機械的強度が高い
・耐摩耗性に優れている
・耐薬品性に優れている
・耐候性に優れている
射出成形加工された、ポリウレタン樹脂を用いた製品の例には下記があります。
・自動車部品:ボールジョイント、ブッシュ、防振部品
・機械、工業部品:パッキン、キャップ、ラバースクリーン
・靴:各スポーツシューズのソール、安全靴、スキー靴
私たちの日常生活でよく使用されるものから、工業製品に至るまで、多岐に渡ります。弾力性、柔軟性、機械的強度の良さから幅広く、主に各種緩衝材として使われ、自動車部品、機械、工業部品、特にクッション性が求められる箇所を担います。
ポリウレタン樹脂は、成形温度(加熱筒温度と金型温度)、梱包方法や保管に関して特に注意が必要です。
ポリウレタン樹脂を射出成形加工する時は、成形温度の管理がポイントです。金型内に充填する時、加熱筒温度、金型温度によって、樹脂の流れやすさが大きく変わります。
樹脂温度、金型温度が高い時は、樹脂粘度が低く、充填しやすくなります。その反面、PLに余分な圧力がかかり、バリが発生したり、冷却不足によりヒケやすくなります。
樹脂温度、金型温度が低い時は、樹脂は流れにくくなります。流動末端や樹脂の流れにくい箇所において、ショートや湯ジワが発生しやすくなります。ゆっくりとガスは排出され、ガス逃げは改善します。
ポリウレタン樹脂は柔軟性に優れるため、成形加工後の梱包や保管方法に注意が必要です。成形品を保管する際は、変形しないように、仕切りやトレーを使い梱包しましょう。仮梱包状態が長いときは、変形が進んでしまうので特に気をつける必要があります。また、加水分解などによる劣化についても配慮が必要です。特に高湿度下では、劣化が促進されるため、高温になる倉庫内に長期的に保管しないように、生産をコントロールすることが必要です。
樹脂の特性を考慮の上で、成形不良の対策を検討することは大切です。発生しやすい成形不良とそれぞれへの対策案は下記です。
ポリウレタン樹脂は、ガスベント詰まりからガス逃げ不良により、ガスショートが発生します。日常点検、金型清掃を行い、ガスベントの詰まりを未然に防ぐことが重要です。また、成形機上でメンテナンスできない金型内部は、定期的にオーバーホールしましょう。
ガス逃げが悪くなると、排出できなかったガスが高温になり、製品部にヤケが発生します。金型のガスを拭き取ることで、一時的に回復します。ガス逃げの悪い箇所は、ガスベントが潰れていることがありますので、ガスベントの彫り直しが有効です。
多点ゲートや、流動の分岐からの合流地点においてウエルドラインが発生します。原料ロットが変更したり、金型内の水管が詰まると、樹脂の流れが変わりウエルドラインが強く出ることがあります。原料ロットの変化点では、都度確認を行い、金型の水管詰まりへの対策として、水管内をエアーパージし、汚れ、ゴミを除去を確実に行うようにしましょう。
経年により、金型が消耗することで、PLや、スライド製品部にバリが発生します。流動末端のバリは、計量値や、射出圧力、保圧を下げることで改善します。流動途中のバリは、バリ発生箇所の射出速度を下げることで改善します。条件調整で改善しないバリは、後加工でバリ取りをするか、金型を溶接・彫り直して修理しましょう。
ポリウレタン樹脂は、弾力性、柔軟性が優れていることから、各種緩衝材の原料として幅広く使用されています。ポリウレタン樹脂の取扱い方法や成形加工のポイント、よく発生する不良について説明しました。
上記例のような要素を考慮し、より生産性の高い成形加工を目指しましょう。