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高密度ポリエチレン(HDPE)の用途や特徴、LDPEとの違いも解説

高密度ポリエチレン(HDPE)の用途や特徴、LDPEとの違いも解説

injection-molding

HDPE樹脂とは

PE樹脂は密度によって大きく2つに分けられ、高密度のPEをHDPE樹脂と呼びます。

HDPEは、High-density polyethyleneの略で、ハイデンポリエチと呼ぶこともあります。

密度は0.910以上~0.965未満と定義され、耐熱性と耐寒性を兼ね備えた樹脂です。

剛性や耐薬品性に優れることから、主にタンクや容器として使用されます。

一般的なHDPE樹脂の特性は、下記の通りです。

  • 耐熱性、耐寒性に優れる
  • 剛性に強い
  • 耐薬品性に優れる
  • 電気的性質に優れる
  • 機械的特性に優れる

性質 / 特性

性質 / 特徴 備考
分子構造 結晶性樹脂
収縮率 大きい 2.0~6.0%
不透明
ガラス転移温度 低い -125℃
耐衝撃性 非常に強い
耐熱性 90℃~110℃
耐候性 × 紫外線に弱い
電気的性質 優れた電気絶縁性をもつ
耐薬品性 強酸化剤には弱い
寸法安定性 × 劣る
機械特性 強い
成形品の外観 良い

代表的な用途

射出成形加工で使用されるHDPE樹脂は下記の通りです。HDPE樹脂は主に雑貨製品に使われることが多いですが、建築材料まで、多岐に使用されています。

  • 雑貨製品:灯油タンク、洗剤容器、シャンプー容器、ビールケース、バケツ
  • 食品用品:食品容器、コンビニ袋、各種フィルム
  • 建築材料:ブルーシート、パイプ、発泡材

HDPE樹脂の特徴を活かした用途

HDPE樹脂は、私たちの身の周りの様々な場所で使われています。耐熱性及び耐寒性は共に優れており、過酷な用途でも使用できる樹脂です。安価で高強度であるという特徴から、大型コンテナや塗料容器などに使用されます。しかし、HDPE製容器の耐熱温度は低いので、電子レンジに対応できないことがあります。一般的に、電子レンジに対応している容器は、PPなどのの耐熱温度の高い樹脂製です。

HDPE樹脂の成形加工時におけるポイント

HDPE樹脂の加工ポイントは下記の2つになります。

  • マスターバッチの混練不足。
  • 効率の良い生産計画。

マスターバッチの混練不足

マスターバッチの混練不足は、成形品の色ムラ不良になります。

成形品の着色手法は色々ありますが、1番ポピュラーな方法はマスターバッチによる着色です。

マスターバッチの混練不足のトラブルを未然に防ぐには、下記のポイントが重要です。

混合比率の呼び方を注意する

混合比率は様々な呼び方があります。
取引先や、マスターバッチメーカーごとに表現が異なりますので、認識に注意が必要です。

(例)
- パーセント(%):3%
- 倍率:30倍
- 対比:100:3

混合時間に注意する

原料とマスターバッチの混合比率が合っていても、タンブラーの混合時間が適切でないと混練不足になります。50Kgのタンブラーの推奨時間は、15分~20分です。

注意点としては、マスターバッチは、静電気を帯びてタンブラー内壁に付着することがあります。エアーガンを使用して、内壁に付着したマスターバッチを取り除きます。

効率の良い生産計画

多品種少量生産を求められる中、闇雲に生産すると大きなロスになりますので、効率の良い生産計画を立てることがポイントです。以下、注意すべきポイントを紹介します。

シリンダー温度で考慮すること

シリンダー温度は比較的上げやすいですが、下げるのには時間がかかります。この点を考慮して、シリンダー温度設定が低い樹脂から生産します。

原料の色に関して考慮すること

濃い色から薄い色の場合、中々色が抜けず、生産途中で前色が出てしまうことがあります。色をつける場合は、薄い色から濃い色順でつけると良いでしょう。

透明⇒青色⇒黒色のように色を被せることで、時間の短縮になります。ただし、白色は黒色と同じくらい強い色なので、色残りが発生しやすい。色変え時はパージを十分におこなったり、パージ剤を使用しましょう。

パージ剤に関して考慮すること

パージ剤は、シリンダー及びスクリューにこびり付いた樹脂を、効率よく除去できます。

濃い色から薄い色に色替えする時は、パージ剤を使用します。スクリュー全体のパージ後、ノズルの先端部を重点的にパージすると、洗浄効果が高まります。

以上のことから、シリンダー温度が低い原料から生産計画を立てる。

薄い色から生産計画を立てることがポイントです。

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成形不良時対策

HDPE樹脂の特性に合わせた成形条件出しが必要になります。

よく発生する不良のポイントは以下の通りです。

糸引きの原因と対策

糸引きとは、金型が開いた時にスプルーが固化されなかった樹脂が、糸状となり伸びてしまう

事象です。

連続生産時、糸引きが金型内やタイバーに巻き付いたり、糸引きにグリースが付き、製品にグリース汚れを挟み込んでしまいます。ノズルの樹脂温度が高いことや、加熱筒先端の内圧が高いことが原因です。糸引きの対策方法は、下記の通りです。

ノズル温度を下げる。

ノズル温度を下げることで、スプルーの切れが変化し、糸引きが軽減します。

必要以上に温度を下げるとノズル詰まりの原因になるので、5℃刻みで下げていき、糸引きの状態を観察します。

サックバック量を増やす。

サックバック量を増やすことで、加熱筒先端の内圧を下げることができ、糸引きが改善します。

サックバック量を増やし過ぎると、エアーを巻き込んでしまい、外観不良の原因になりやすいので注意が必要です。

糸引き防止を設置する。

スプルーブッシュに糸引き防止スリットを設置することで、強制的に糸引きを防止します。

気泡の原因と対策

気泡とは、成形品の内部が空洞になってしまう事象です。

特に、最終充填部のガスの排気不良により、ガスの逃げ道が無くなることが気泡の一因です。容器のリブや流動末端に発生しやすい不良事象になります。日常的な金型の掃除、定期メンテナンス不足には注意しましょう。気泡の対策方法は、下記の通りです。

ガスベンドの掃除を行う。

毎日や、毎勤務に、ガスベンドの掃除を行うことで、ガス逃げが良くなり、末端に発生しやすい気泡が改善します。

定期的にオーバーホールを実施する。

30,000、50,000ショットなど定期的にオーバーホールを実施しましょう。日常点検で普段行き届かない箇所を、定期的にメンテナンスすることで、ガスの排気が向上し、成形条件が安定します。

オーバーパックの原因と対策

オーバーパックとは、金型内に樹脂が多く充填されてしまう事象です。パーティングラインや、入れ子等の隙間に、滞留した樹脂が入り込こむことが原因です。HDPE樹脂は、滞留すると粘度が下がり流動性が上がる特徴を持つため、注意が必要です。トラブル等で射出成形機を停止させる時は、停止した時間の長さにより対策を行います。オーバーパックの対策方法は、下記の通りです。

立ち上げ時(停止時間が長め)の対策

一旦射出ユニットを後退させて、パージを行い、ショートショットからスタートします。

チョコ停時(停止時間が数秒と短め)の対策

VP切替位置を手前にし保圧を0にして、ショートショットから立ち上げます。

まとめ

HDPE樹脂の取扱い方法や成形加工時のポイント、よく発生する不良について説明しました。HDPE樹脂は耐熱性や耐寒性、耐薬品性に優れていることから、主に中空製品のタンクや容器で使用され、私たちの生活では欠かせない樹脂です。マスターバッチの混練不足や、効率の良い生産計画に注意することが大切です。上記例のような要素を考慮し、より生産性の高い成形加工を目指しましょう。