ABS樹脂とは、性質の異なる3種類をかけ合わせた素材です。
耐衝撃性、外観の光沢に優れ、塗装やメッキなどの2次加工との相性も良く、 日用品から工業部品まで様々な分野で広く使われています。
外観が良く高機能で汎用性の高いため、多種多様に加工され使用されます。
プラスチックでありながらきれいな光沢が得られるため、外観部品で広く使用されます。 自動車、家電、遊技機の外観部品やメッキ部品の下地として使用されています。
耐衝撃性の良さは、家電、一般機器の外装や機能部品まで広く使用されます。 PCに比べて安価ですが、強度は強いので、より汎用的に使用されています。 耐衝撃性の高さから、家電や自動車のハウジング部など機能信頼性が必要な箇所に使用されます。
ABS樹脂製のヘルメットは、耐衝撃性、絶縁性が高く、PC製ほど耐熱強度を必要としない環境向けに最適です。
既存の樹脂サッシはアルミ製でした。ABS樹脂などで製造されたサッシは熱を通しづらくアルミ素材の1/100程度であり、断熱効果に優れます。 風呂場のサッシにも使用され、発泡材を添加し、耐熱性能を向上させています。
ABS樹脂の成形加工における、原料・人日、成形条件の設定といった作業時に注意するポイントやよくある原料外観不良別の対策方法は以下です。
成形前に予備乾燥が必要(80℃で3時間)です。未乾燥のABS樹脂は、成形するとシルバーストリークが発生します。
220℃前後に設定します。糸引きが強い時は、加熱筒ノズル温度を下げます。
40〜80℃に設定します。金型温度は製品表面の外観に大きく影響します。金型温度が低いと、流れが悪くなり、ショートショット、湯じわの原因になります。
また、ABS樹脂は、成形加工しやすい樹脂ですが、その中でも注意すべきポイントを解説していきます。 以下が代表的な課題ごとの対策ポイントです。
高速で充填するとシルバーが出やすい。 金型内の構造が複雑でボスやリブを巻き込む時は、要注意です。
流動の合流地点では、ウエルドラインは避けられません。 袋小路のガス逃げ不良にならぬ様、射出速度を調整しましょう。
数万ショット成形してくると、ガス逃げ不良によるショートショット、ガス焼けが発生します。 日常点検にて、パーティングライン、ガスベント部のガスヤニ清掃と、定期で金型オーバーホールが必要です。
数万ショット成形により、スライド入れ子はグリース切れや、消耗により摺動が悪くなります。 型開きと連動して摺動する際、摺動の偏りやバラツキにより、製品部に引っかき傷が出ることがあります。 また、エジェクターピン、ストリッパープレートの摺動不足も打痕や、変形の原因になります。 成形時に、実際に稼働しているところを観察し、動きに不具合がないか、異音がないか確認することがポイントです。
摺り傷、打痕、ヒケ、シルバー、ふくれ、湯じわ、吸着汚れ、糸引き付着など、 製品表面に現れる不良には注意が必要です。 2次加工後、よりはっきりと不良が浮き出ます。 また、金型からのグリースやガスヤニ付着は、2次加工時の加工不良に繋がります。 2次加工後の成形不良は、粉砕して再利用ができません。 付加価値がつくと自ずと廃棄金額が高くなっていきます。
日用品から、工業部品まで広く使用されるABS樹脂は、機械的性能、耐衝撃性に優れ、 とても加工しやすい原料です。 2次加工との相性が良く、印刷、塗装、メッキの生地として使用されます。 特に製品表面の外観不良、グリース、ガスヤニ付着には気をつけて下さい。 上記の例のような要素を考慮し、より生産性の高い成形加工を目指しましょう。