熱可塑性樹脂は、加熱すると溶けて軟化し、冷却すると固化する性質のある樹脂です。
熱可塑性樹脂は、プラスチック材料の中で一番種類が多い樹脂です。再利用が可能なため、加工や成形に利用されることがあります。例えば、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などがあります。
日用品から家電製品、自動車部品と多岐に使用されており、私たちの身の回りで無くてはならない素材です。
熱可塑性樹脂は、大きく分けて、汎用プラスチック、汎用エンジニアプラスチック(汎用エンプラ)、スーパーエンジニアプラスチック(スーパーエンプラ)の3つに分けることができます。分類それぞれで、異なる用途として活用されたりもしますが、熱可塑性樹脂の用途は、一般家庭で使用される日用品から、家電部品、自動車部品、建築関係まで、多岐に渡っています。
汎用プラスチックは後述する、エンジニアリングプラスチックと比べて安価(150~300円/kg)な素材です。代表的な汎用プラスチックは、下記の通りです。
耐衝撃性、耐薬品性に優れており、加工性に優れる樹脂です。
日用品、食品容器、家電製品、自動車部品、上下水道管などです。
汎用プラスチックに比べ、高価(300~2,000円程度/kg)であり、機械的特性等で優れた素材をエンジニアプラスチックと呼びます。代表的な、汎用エンジニアプラスチックは、下記の通りです。
機械的特性が良く、耐熱性に優れており、主に工業部品に使用される樹脂です。
歯車(ギヤ)、自動車部品、ペットボトル、CD/DVD、レンズなどです。
汎用エンジニアプラスチックと比較して、さらに高価(1,000~5,000円以上/kg)な素材をスーパーエンジニアプラスチックと呼びます。代表的な、スーパーエンジニアプラスチックは、下記の通りです。
機械的強度が非常に高く、耐熱温度が優れています。また耐薬品性も良く、金属の代替品として使用される樹脂です。
自動車エンジンまわり部品、電子レンジ、口腔医療器具などです。
熱可塑性樹脂は、様々な方法で加工されます。
代表的な成形法は、以下の通りです。
シリンダーで加熱した樹脂を金型に流し込み、冷却して固めます。
最もスタンダードな成形法です。射出成形法では、さまざまな種類の熱可塑性樹脂が使用されます。
シリンダーで加熱された樹脂を、ところてんのように、金型ダイから吐出します。
その後、サイジングで形状を作り、水槽で冷却して固めます。短冊切りや、長物の成形品を生産するのに最適な成形法です。
押出成形法は長い設備のため、長いスペースが必要です。
押出成形法では、熱可塑性樹脂のうち、汎用プラスチックが多く使用されます。
プリフォームを予熱して、金型内に入れた後、内側から空気を入れ、プリフォームを膨らませます。ボトルや容器等の中空成形品を生産する成形法です。ブロー成形法は、熱可塑性樹脂の内、汎用プラスチックや、汎用エンジニアプラスチックのPETが多く使用されます。
成形加工する時は融点まで加熱、加工、冷却のプロセスで成形品になります。
一度冷却された成形品は、再加熱することで、繰り返し加工できます。
プラスチックは、私たちの生活に欠かせない素材です。その一方で、プラスチックは環境に与えるダメージが大きいため、「プラスチック」というキーワードが環境汚染の代名詞になっています。
その原因は、プラスチックの不適切な取り扱いで、海洋汚染や生態系の破壊につながっています。
そうした背景もあり、プラスチックに関連したテーマとして、リサイクルに関する取り組みや環境に配慮したプラスチック素材の開発は活発にされています。
再利用が可能なメリットを活かして、プラスチック製品のリサイクルが進んでいます。
ペットボトルや、食品トレイ、フィルム材など、様々なプラスチックが回収されていますが、分別されていないプラスチックゴミは選別作業が必要です。
しかしながら、再利用するのに、多額のコストがかかることが課題となっています。
私たち一人一人の、リサイクルに対する意識を高めることが求められます。
高機能を求めすぎて、環境への悪影響が大きくなってしまったプラスチックは、地球環境に配慮した新しい素材の開発が進んでいます。
製品の使用期限を過ぎた後、土に還る生分解プラスチックや、サトウキビや米などの植物由来のバイオマスプラスチックが有名です。
生分解プラスチックは、1WAyユーズのプラスチック袋や梱包資材に導入されています。
バイオマスプラスチックは、高強度を必要としない日用品やおもちゃ、雑貨などに商品化されています。
熱可塑性樹脂は、日用品から工業部品まで、多岐に渡って使用されています。射出成形法と熱可塑性樹脂の組み合わせは、自由度の高いデザインを安価に大量生産できることで、広く普及しています。その一方で、熱可塑性樹脂は、環境汚染の代名詞にもなっていますが、先述の通り、少しづつ環境に配慮した樹脂に置き換わっていく動きも活発です。限りある環境に優しいものづくりが今後のテーマです。