射出成形における巣とは、成形品の内部に空洞がある状態です。
巣は、シルバー、気泡、ふくれ、真空ボイドなど、成形品の内側に空洞ができる不良の総称として使用されます。充填時のエアーを巻き込みや、袋小路部のガス抜け不良、成形品の肉厚部などさまざまな要因で巣が発生します。どの要因による巣なのか見極めて対処することが重要です。
巣が発生しやすい箇所は、発生要因によって異なりますが、主に3つのタイプに分類されます。
この箇所では、エアーの巻き込みが主な要因となります。
エアーが混入することによって、成形品の表面には「シルバーマーク」、PL周辺では「ふくれ」といった不良(巣)が発生する可能性があります。
主な要因としてガス溜まりと気泡の発生が挙げられます。この箇所においては、ガス抜けの不良により気泡が形成され、それが巣となる可能性があります。
ガス抜けの悪い袋小路部や、ガスの溜まりやすい流動末端は「ガス抜けの不良により気泡が発生しそれが巣となる可能性があります。
肉厚部では収縮が大きくなりやすいため、収縮によって内部に真空ボイドが形成されることがあります。
そのため、肉厚部においては真空ボイドと呼ばれる巣が発生しやすく、リブ裏や肉厚部に巣が形成される可能性があります。
射出成形加工における巣の発生要因は、大きく分けてエアーの巻き込み、ガス逃げ不良、製品の形状の3つです。
エアーの巻き込みが要因で、巣になる場合は下記の2通りです。
充填時のエアー巻き込みは、製品表面に砂を散らしたようにちいさな粒状(シルバー)に巣が発生します。
背圧は、計量した樹脂の密度に大きく影響します。背圧が少なく(密度はスカスカ)多くの空気を含んでいる状態で充填すると、全体的にシルバーが発生します。背圧を上げて、樹脂の密度を上げることで改善します。
計量後のサックバック量が多いと、計量した樹脂にエアーを巻き込んでしまいます。
サックバックが多い時は、ゲート周辺から放射状にシルバーが発生します。サックバック量を下げることで、エアーの巻き込みが改善します。
充填速度が速いと、金型内のエアーを巻き込み、流動方向に合わせてシルバーが発生します。充填樹脂が、金型内の障害物を通過した時にエアーを巻き込み、その直後に発生します。事象箇所の充填速度を下げるか、多段制御で充填速度を調整することで改善します。
充填後半のPL付近のふくれには、金型のPL清掃や充填速度を下げることで改善します。
充填速度が速すぎると、エアーをうまく逃がせず、成形品内側にふくれが発生することがあります。
PLのガスベントを清掃して、または、充填速度を下げて、エアーをうまく逃がすことが有効です。
ガス逃げ不良が要因で、巣になる場合は下記の2通りです。
袋小路になった部分のガス逃げが悪いと、気泡になります。その気泡には、金型清掃や、オーバーホールが有効です。どうしてもガス逃げ不良による巣が直らないなら、事象個所を入れ子で分割したり、ガス抜き専用の入れ子を導入することで改善します。
流動末端において、ガスがうまく抜けないと、気泡になります。金型清掃や、充填速度を下げることで、ガス逃げが良化します。
製品の形状に起因する巣は、主に肉厚部に発生します。
肉厚部に発生する巣は、真空ボイドと言われます。製品の表面は固化しているが、内側に収縮する時に、発生します。真空ボイドの中身は空気ではなく、真空の空洞です。
肉厚部は収縮力に負けて、内側に真空ボイドが発生しやすくなります。
金型の肉厚部を薄くする設定変更をしたり、冷却時間を伸ばして収縮の影響を減らすことが有効です。
ただし、金型の形状変更は高額で、波及リスクが心配です。また、冷却時間の変更は、製品の寸法に大きくかかわって来るので、量産前の試作が必要です。
発生した巣不良を、次工程、客先に流出しないために、発生した時点で発見・対処する仕組み作りが大切です。下記が流出対策の一例です。
立ち上げ時は、成形機、周辺機器、金型の動作、温度などが安定していません。
バラツキが大きく、品質基準を逸脱する製品が発生しやすい状況です。立ち上げから、1時間程度は特に注意が必要です。
基準サンプルを基に、初期検査をしっかりと行い、不良発生がないことを確認しましょう。
射出成形は、樹脂を溶かして充填するごとに金型内にガス汚れが蓄積していきます。
時間経過に伴い、製品の不良発生率は高まります。製品の品質基準に則って、ロット毎や、定時毎の抜き取り検査を実施することが重要です。
巣について、不良発生要因及び原因、不良対策についてまとめました。巣の要因は、エアーの巻き込みや、ガス抜け不良、製品の形状などさまざまです。
発生した巣の要因が何かをしっかりと見極めて1つづつ対策していくことが重要です。
巣不良を見逃すことなく、高い成形加工技術の確立を目指しましょう。