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切削加工における構成刃先とは|構成刃先の原因と対策

切削加工における構成刃先とは|構成刃先の原因と対策

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切削加工における構成刃先とは

構成刃先は、切削加工の高い圧力と摩擦熱によって刃先の先端に切粉が溶着し、切れ刃として作用してしまう現象です。

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延性材料であるアルミニウムあるいは軟鋼などを比較的低速度で切削すると、切削部分での被削材の物理・化学的変化により被削材の一部が刃先に付着し、あたかも新しい刃先が出来たように振る舞います。 溶着した構成刃先は加工硬化しているため非常に硬く、刃先にかわってワークを切削してしまうため、仕上げ面の品質低下や刃先のチッピングを引き起こします。 この記事では切削加工における構成刃先の発生の原因と、その対策について解説します。

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構成刃先に起因して発生する課題

構成刃先に起因して発生する課題には、以下のようなものがあげられます。

  • 仕上げ面の品質低下
  • 寸法精度の低下
  • 刃先のチッピングや工具寿命の低下

仕上げ面の品質低下

構成刃先の溶着によって刃先の切れ味が落ち、仕上げ面の品質が低下します。 構成刃先が刃先を完全に覆ってしまうと、ワーク材質そのものでワーク表面を削ることになるため、構成刃先の形状が金属表面に転写されてしまいます。それだけでなく、切れ味が悪いためワークをむしり取るような削り方になってしまいます。つまり、仕上げ面の品質はさらに悪化します。

寸法精度の低下

構成刃先が大きくなるほど切り込み量も大きくなり、寸法精度が低下します。 構成刃先は加工中に発生・成長・脱落を繰り返すため、切り込み量やすくい角も絶えず変動します。

刃先のチッピングや工具寿命の低下

構成刃先は刃先に強く溶着するため、脱落時に刃先の欠損やチッピングを引き起こすことがあります。構成刃先は切削とともに成長し、ある程度を超えるとはがれおちるというサイクルを繰り返します。したがって、構成刃先が剥がれ落ちる際に刃先まで一緒に剥がれ落ちるのです。 加工中の刃先の欠損を未然に防ぐためにも、構成刃先の事前対策が必要です。

構成刃先はどんな時に発生する?

構成刃先は以下のような状況で発生します。

  • 延性材料を加工する場合
  • 切削点の温度が低い場合
  • 工具とワークの親和性が高い場合

延性材料を加工する場合

軟鋼などの延性材料(伸びやすい材料)は、分断されずに残った切粉が切削熱によって加工硬化してしまい、構成刃先が発生しやすくなります。 (延性材料の一例:軟鋼、黄銅、ステンレス、アルミニウムなど)

切削点の温度が低い場合

切削点の温度が再結晶温度より低いと、硬化した切粉が刃先に溶着し構成刃先が発生します。 そのためビビりやチッピング対策のために切削条件を落とすと、切削熱が下がってしまい構成刃先が発生しやすくなるため注意が必要です。 (再結晶温度:加工により硬く歪んだ金属組織が、加熱によりもとに戻る温度)

工具とワークの親和性が高い場合

工具材質とワーク材質の親和性(結びつこうとする性質)が高いほど、構成刃先が発生しやすくなります。 特にタングステンを主成分とする超硬工具は鉄との親和性が高く、切削熱によって切粉が溶着し構成刃先の原因となります。 ワーク材質によって、工具材質を使い分ける必要があります。

構成刃先の対策方法

構成刃先の発生を防止するためには、工具や切削条件の選定が重要となります。

工具選定による対策

工具の切れ味やワークとの親和性など、工具選定を見直し対策をします。

切れ味の良い工具を選定する

すくい角が大きく切れ味の良い工具で切粉の排出性を高め、構成刃先の発生を防ぎます。 一般的にすくい角が大きいほど切粉が薄くなり、切粉の排出性が上がります。 すくい角は30度以上が理想的ですが、大きくなるほどチッピングや工具破損が起きやすいためバランスが重要です。

親和性の低い工具を選定する

鋼材の場合、サーメットやコーテッド工具などワーク材質と親和性の低い工具を選定することで、構成刃先の発生を防ぎます。 特にチタンやタンタルを主成分とするサーメットは、鉄との親和性が低く鋼材の仕上げ加工に最適です。 アルミなどの非鉄材料では、親和性が低いPCDやCBNなどのダイヤモンド工具が使われますが、硬度が高くチッピングを起こしやすいため加工工程に応じた使い分けが重要です。

切削条件による対策

切り込み量や切削速度など、切削条件を見直し対策をします。 切削条件の調整は、加工効率や仕上げ面の品質にも影響するため、バランスが重要です。

切り込み量を大きくし切削温度を上げる

切り込み量を大きくし、切削温度を金属(切粉)の再結晶温度よりも高くすることで、構成刃先を消滅させます。金属は切削点の温度が再結晶温度以上に上がれば刃先にくっつきにくくなる性質を持っています。(鋼材の場合、約600℃で構成刃先が消滅します) ハイス(高速度工具鋼)などの耐熱性の低い工具では刃先が軟化するため、切削温度を上げ過ぎないよう注意が必要です。

クーラントを使い潤滑性を上げる

クーラントを使い潤滑性を上げることで、構成刃先の原因となる切粉を排出します。 また摩擦が小さくなるほどせん断角が大きくなり、切粉が薄くなります。 切削温度が下がり過ぎると、構成刃先の発生につながるため注意が必要です。

回転数・送り速度を上げる

回転数や送り速度を上げ、切削点の温度を一定以上にすることで、金属(切粉)の再結晶を抑え構成刃先を防ぎます。 切削速度が上がるにつれ工具寿命が短くなるため、注意が必要です。

構成刃先の原因と対策まとめ

この記事では切削加工における構成刃先の発生の原因と、その対策について解説しました。 構成刃先はバイトだけでなく、フライス工具やドリルでも発生する厄介な現象です。 鋼・鉄・アルミなどのワークや工具材質によっても発生条件が大きく変わるため、幅広い金属材料の知識を身につけ対策していきましょう。