射出成形加工におけるふくれとは、成形品の表面が風船の様にふくれている状態を指し言います。充填時に排出しきれなかったガスが表面にふくれ出ることが原因です。通常は、金型内に樹脂が充填される時、空気やガスはガスベントから排出され、樹脂に置き換わります。しかし、ふくれが発生する時は、ガスが十分に排出されず、成形品の内側に残り、金型から取り出された時に、そのガスが表面にふくれ出てしまいます。
ふくれは、成形品内に残されたガスや空気が原因なので、特にPLの近くや、流動末端に発生しやすいです。
また、累計ショット数が増えていくとガスベントの詰まった箇所や、ガス逃げが難しい袋小路部に発生しやすくなります。
射出成形加工におけるふくれの発生原因は、射出成形条件、金型内のガスの蓄積、原料ロットなどに起因します。
金型内に充填する時の射出速度が速すぎたり、樹脂温度が高すぎるなどの理由で、樹脂から発生するガスが多い時にふくれが発生します。本来はガスベントから適切にガスは排出されます。しかし、射出速度が速すぎると、ガス逃げが間に合わずなくなり、ガスが成形品の内側に留まってしまい、ふくれの原因になります。
こういった成形条件に起因するふくれを改善するには、ガスが逃げる余裕を持って充填することがポイントです。ふくれが発生している箇所を通過する時の射出速度をゆっくりにしたり、加熱筒温度を下げ、ガスの発生を少なくすることが有効です。
または、冷却時間を長くして、成形品表面の固化層を厚くすることでふくれが改善することがあります。ただし、冷却時間を長くすると、後収縮が少なくなり、冷却時間変更前の寸法より大きくなりますので、注意が必要です。
累計ショットが増えていくと、ガスベントがガス汚れで詰まり適正にガスが排出できなくなります。ふくれだけでなく、ガスショートやガス焼けが発生することもあります。こういったガス逃げ不良に起因するふくれには、毎日の型清掃や、数万ショットごとに金型オーバーホールをして、金型のガス逃げをリセットすることが有効です。
袋小路部や深いリブなど、ガス逃げが悪い部分は、ガス逃げ用のエジェクターピンを設置したり、多孔質鋼材で入れ子を作成するなどして、ガス逃げを改善することがポイントになります。
多点ゲート金型において、流動の合わせ目にふくれが発生する時は、金型温度を変更することで充填された樹脂の流動が変化し、改善することがあります。
使用する樹脂の原料ロットが変わった時に、ふくれが発生することがあります。原料ロットのバラツキはよくおこります。こういった原料ロットの変更に起因するふくれは、原料ロットの変更点を予めマークしておき、品質に問題がないか立ち会って確認することが重要です。原料ロットの変化点を明確にするには、原料のロットの先入先出管理が有効です。
また、フィラーやマスターバッチ、粉砕材など複雑な混合設定の時は、バラツキが大きくなることがあります。特に原料ロットの変化点に気を付けましょう。
発生してしまったふくれ不良を次工程に流出させないためには、検査の強化や、画像検査機の導入などが効果的です。
射出成形の立ち上げ30分~1時間くらいは、成形は安定していません。射出成形機の計量動作や、金型温度はゆっくりと安定していくためからです。立ち上げ時に、規定数の捨てショットをしたからと言って、成形品が良品とは限りません。品質規格に合格しているか品質項目を確認すると共に、成形機、周辺装置が正常に稼働しているかを確認しましょう。また、呼び出した成形条件が間違っていないか確認し、また、更新されていない条件を選んでしまうといううっかりミスもあるので、立ち上げ時の成形条件の確認は注意しましょう。
生産している成形品が品質規格に合格しているか、定期的に成形品をサンプリングしましょう。連続成形しているからといって、検査を手抜きすることなく、初期検査と同様の検査を継続しましょう。時系列に沿ったサンプリングをすることで、ふくれの発生がいつからなのかを見返して確認できるようになります。
ふくれ不良は、画像検査機の導入がおすすめです。事前に予め良品の画像をインプットしておき、その画像に対して機械が合否判定を行います。導入コストが大きくかかる点や、操作運用の技術強化、専用機になってしまうことが導入障壁になりますが、ふくれをはじめその他の成形不良の検査が可能になるのは大きなメリットです。
ふくれについて、不良発生要因や原因、不良対策について解説しました。ふくれの要因は、ガスの排出不良によるものです。本記事で紹介した対策を事前に行い、ふくれを見逃さずに高品質な成形加工技術を確立確率していきましょう。