射出成形における混入とは、取引先の要求する以外の異物や不純物などが入り込んでしまう状態です。
大きく分けて3通りの混入があります。
これらの混入は、発生要因が異なるため、それぞれにあった対策が必要です。
混入の発生要因は様々です。要因ごとに対策が異なります。
成形品への異物混入は、全不良中で1番発生頻度の高い不良事象です。
製造工程(原料投入、原料輸送、射出成形)の内、混入確率の高い事例をピックアップして解説していきます。
練り込み異物(黒点)は射出成形機の構造上避けられません。高温に溶かした樹脂を高圧で射出するため、加熱筒内のスクリューには、樹脂が炭化してこびりついていきます。
この炭化物が剥がれ落ちることで、成形品に練り込まれます。
樹脂の種類によりますが、一般的に透明な樹脂や、添加剤含有、マスターバッチを混合する樹脂などは、炭化しやすい傾向です。
こういった練り込み異物の混入は、パージ材で除去したり、発生頻度が高い場合は、スクリュー分解清掃が有効です。
練り込み異物に次いで、金属片の混入が発生頻度の高い事例になります。
成形機や周辺装置(取出し機、ドライヤー、粉砕機など)の劣化や、部品の脱落が原因です。
金属片は、加熱筒内に入ると樹脂と一緒に混錬され成形品に充填されてしまいます。
特に、食品容器や、医療機器など人体に影響を及ぼす成形品は重大不良になります。
また、大きな金属片は、スクリュー内を傷つけ、先端のスクリュー3点セットを破損することがあります。これらを直すには、高額な修理費がかかります。
こういった金属片の混入は、混入しない様に機械装置の日常点検と、金属片が加熱筒内に侵入しないように格子状のマグネットを組み込んで予防することが重要です。
一般的に射出成形機のレイアウトは、近距離で横並びです。生産中に成形品が飛散し、隣の製品箱に入ってしまうことがあります。また、生産後に製品の検査や計量を行う際、作業机のクリアランスチェックを怠ると、前の検査品が混ざってしまいます。
成形工場では、横並びに成形機がレイアウトされています。自重落下して製品箱に受けたり、取出し機で取り出してコンベアに並べた後梱包するなど、様々な生産ラインがあります。本来は、別々に管理されている生産ラインですが、成形品が飛散したり、取り違えたりすることで、異なる生産ラインへ混入してしまいます。
自ラインの飛散養生をしっかりするとともに、他ラインからの混入を予防・対策することが重要です。
細かな成形品は、成形後に抜き取り検査や員数の計量工程があります。
様々な種類の成形品を、1つの検査台(計量器)で作業するため、前の成形品が混入することがあります。このような混入には、前の成形品が残っていないかラインクリアランスチェックすることが重要です。
出荷時に発生する混入は、指示書とピッキングする製品を間違えてしまうことが原因です。また、同時に複数の向け先がある場合に、向け先の運搬車に違う製品を載せてしまうことにより混入になります。
出荷時に発生する混入は、ピッキングミスが原因です。ピッキングの指示が間違っていたり、作業環境が紛らわしかったりすることで発生します。特に品番や品名の似ている成形品や、色違い品等をピッキングする時は、注意が必要です。類似品の置き場所を離したり、わかりやすいように識別表示するなど、間違えにくい仕組み作りがポイントです。
出荷する成形品は、通箱やかご台車に詰まれて出荷準備されます。この時、運搬車が何台も停車していると、積載時に間違って積み込んでしまい混入になります。向け先の表示を大きくしたり、置き場所を指定するなどの識別管理をすることで、混入を防ぐことができます。
これらの混入の流出を防止するには、下記の取り組みが有効です。
これらの流出対策に共通することは、発生した混入不良に対して、次工程に流出させない仕組み作りです。
混入について、発生要因及び対策について解説しました。
混入は、製造工程や、製造環境、出荷時で発生し、それぞれの発生要因が異なる事象です。
これらの不良が流出させないためには、発生した混入を確実に感知できる仕組み作りが重要です。日々、確実な作業の積み重ねを行うことで混入の発生、流出の予防につながります。
事前に対策をして、高い成形加工技術の確立をめざしましょう。