射出成形における汚れとは、成形品が汚れている状態です。
主な汚れの要因は下記の通りです。
様々な工程で、汚れは発生します。
汚れ不良は、発生源の特定が難しい不良です。
「どこでどうして汚れがついたのか?」を理解して対策することが重要です。
そこで今回は汚れ発生のメカニズム、原因と対策を解説していきます。
射出成形において汚れ不良は、製造工程のどこでも起こりうる不良のため、発生頻度が高い不良事象です。
そして、そのメカニズムは全て異なります。
下記に、主な汚れ不良の発生メカニズムをまとめていきます。
金型、成形機のグリースの付着や、ガス汚れのしみ出しが、主な汚れの原因です。
型開閉時に、金型のスライドコアやエジェクターピン、成形機のタイバーやトグルグリースが、製品部に付着することで発生します。
立ち上げ時は、汚れの発生頻度が高く、1時間程度で汚れは落ち着いていきますが、金型の奥からしみ出す汚れは、ずっと出続けることがあります。
また、連続成形していくと、ガス汚れが蓄積し、製品面に汚れが出てくることがあります。
取出しチャックや吸着パッドのつかみ跡、画像検査機のターンテーブルやパーツフィーダーの汚れ、コンベア搬送中の静電気による汚れの付着など、成形品と装置の組み合わせによって汚れが発生します。
コンベア上で搬送する際に、夏場は虫が付着し、冬場は静電気でチリ汚れが付着します。
検査や梱包時に検査担当者の指紋、汚い検査手袋の汚れや、梱包に使用する通い箱が汚れていたり、梱包時の養生不足が原因で汚れが発生します。
汚れが発生しやすい箇所は、下記の通りです。
金型の摺動部は、金属のこすれ汚れや、蓄積したガス汚れが出やすい箇所になります。
構造上、摺動部はかじりを防止するためグリースを塗布しますが、グリースを塗布しすぎると、製品面に汚れが出てきてしまいます。
スライドコアは、摺動部から製品面に汚れが出てきます。
エジェクターピンは、突き出し動作を繰り返すうちに、ガス汚れやこすれ汚れが蓄積し、製品面に汚れが出てきます。
金型スプルーの周辺は、糸引きの影響を受け汚れが発生します。スプルーから長く伸びた糸が、金型や成形機のグリースに付着して、次のショットに挟み込まれます。
インサートされた汚れは、表面上の汚れではないので、拭いても拭き取れません。
取出しチャックや吸着パッドの製品接触部は、チャック・吸着パッド自体が汚れていると汚れが転写してしまいます。
射出成形工程後の装置内の汚れは、製品を整列・把持する工程でつくことが多いです。
これらの工程で成形品が、装置とこすれることで汚れが発生します。
射出成形加工における汚れの対策は、下記の通りです。
金型・成形機のグリースや、ガス汚れには、1日毎、勤務毎の日常点検が有効です。
金型・成形機にはグリースが必要ですが、過剰に塗布すると汚れの原因になります。
金型・成形機の汚れ
定時で点検・処置を実施することで、未然に防げる汚れです。
また、累計生産数3~10万ショット毎に、金型をオーバーホールすることが重要です。
計画的に予定しましょう。
スプルーから伸びる長い糸引きが、グリースや金型内の汚れを巻き込んで、次のショットにインサートすることがあります。
原因となる糸引きを処置することが重要です。
ノズルの温度を下げたり、サックバックを多くしたり、保圧を多段制御し、最終圧力を0.1secかけるなどして、スプルーの切れを調整することで対処します
成形条件で改善が見られない時は、ノズルタッチ部に、段ボール紙や、糸引き防止キャップをはさむことで改善します。
ただし、流動を絞る影響で、湯ジワやショートが発生することがあります。
成形品をよく見ながら、調整しましょう。
取出しチャックや吸着パッドのメンテナンスを怠ると、成形品に汚れが転写してしまいます。
ハンコの様に毎ショット同じ汚れがついてしまいます。
こちら日常的な点検で回避できます。
まずは、立ち上げ前に毎回、取出しチャック・吸着パッドの汚れ確認と清掃をすることが大事です。
加えて、定期的に取出しチャックや吸着パッドの清掃をして予防しましょう。
コンベアで成形品を搬送する時に、夏場は虫が、冬場は静電気によるチリゴミが、成形品に付着します。
特に、夏場の白色成形品は、虫がたくさん付着します。
コンベアを覆うカバーを常設し、夏は捕虫器や虫よけグッズを、冬は除電気を設置して、空間管理を徹底しましょう。
検査担当者の作業がばらつくことで、汚れが発生します。
検査手袋の有無や交換時期を決めるなどの検査手順や適正作業を決めて、業務の標準化をすることが重要です。
特に、外国人作業者は、言語の壁があり、生活習慣や文化が違いますので、理解度を確認しながら指導することがポイントです。
梱包に使用される箱のうち、通い箱から汚れが発生します。
客先、取引先とを往復し、繰り返し使用される通い箱は、箱内部が破損したり、汚れてしまうことがあります。
通い箱の運用ルールを決め、汚れた通い箱がそのまま使用されないようなシステム作りがポイントです。
発生した汚れ不良を、次工程、顧客先に流出しないために、発生した時点で発見・対処する仕組み作りが大切です。下記が流出対策の一例です。
立ち上げ初期は、金型に塗布されている防錆剤やグリース、ガス汚れが成形品に付着します。
捨てショットを確実に行い、不良品と良品の区別をはっきりと行いましょう。
基本的には、時間の経過とともに汚れは収まっていきます。
金型からしみ出してくるしつこい汚れは、生産を一時停止して、成形機上で分解清掃するか、それでも改善しなければ、一旦金型をおろしてオーバーホール後に再立ち上げしましょう。
定時や、勤務毎、生産ロット毎に、サンプルを採取し、検査することが重要です。
定期時間ごとのサンプルを採取することで、発生した不良の時間変化がわかります。
これらはいつから発生し、いつまで発生し続けているのかを絞り込む重要な情報になります。
汚れについて、不良発生要因及び原因、不良対策についてまとめました。
発生した汚れの要因が何かをしっかりと見極めて、1つづつ対策していくことが重要です。
汚れ不良を見逃すことなく、高い成形加工技術の確立を目指しましょう。