ポリサルフォン樹脂(PSF:PolySulfone)は、琥珀色のスーパーエンジニアプラスチックです。ポリサルホン、ポリスルフォンと呼ばれることもあります。
耐熱温度175℃で、機械性能が高く、耐薬品性や、成形加工性にも優れます。食品や医療機器の安全性に関する法令に適合しており、高機能な物性と、滅菌処理が繰り返し可能なことから、医療機器や試験・検査機器などに使用されます。一般に原料価格が2,000円/kg以上する高額原料にあたります。
一般的なポリサルフォン樹脂の特性として、下記が挙げられます。
広い範囲で使用できる高機能プラスチックです。加水分解に強い耐性があるため、熱水、アルカリ性薬品に強く、オートクレーブなどによる繰り返し殺菌(132℃)にも対応できます。
主に、医療機器、検査機器、食品衛生などの分野で使用されます。
代表的な成形品には下記があります。
ポリサルフォンは、物性が高いため、その取り扱いが難しい樹脂です。
下記に、取り扱い時のポイントをまとめていきます。
ポリサルフォンは、高機能なスーパーエンジニアプラスチックのため、その原料単価が高額です。
グレードによりますが、多くが2,000円/kg以上のとても高価な樹脂です。
そのため、パージや、捨てショット、条件調整、停止作業などの原料廃棄ロスを、最小限に抑えることが効率的な生産を行うのに重要となります。
PC(ポリカーボネート)等の樹脂を用いて、代替パージしたり、生産停止時の原料投入止めをシビアに行うなど、歩留まり率を意識しましょう。
ポリサルフォンを用いての射出成形においては、原料の予備乾燥温度、加熱筒温度、金型温度など温度設定もポイントとなります。
十分な予備乾燥が必要です。高額な原料を確実に乾燥するためには、熱風式の乾燥機よりも、除湿乾燥機や真空乾燥機を使用しましょう。また、生産に対して、乾燥材の供給が間に合う様に、乾燥機の容量に気を付けましょう。
加熱筒温度は、通常350℃前後に設定します。高圧縮タイプのスクリューを使用している成形機は、溶融しやすいように少し高めに温度設定します。
金型温度は、100℃前後に設定します。冷却媒体に油を用いる金型温調機や、金型に直付けする棒ヒーターを使用して温度管理します。
ポリサルフォン樹脂の成形中に、よく発生する不良は以下の通りです。
加熱筒内の高温下で滞留した樹脂が、高圧縮されることで、炭化物が発生しやすく、その一部が剥離して練りこみ異物になることがあります。
スクリュー回転と背圧のバランスを調整し、必要最小限のスクリュー回転数と背圧を設定しましょう。
無駄な高回転と高圧縮は、練りこみ異物の原因になります。
練り込み異物が多く良品が取れない時は、原料の廃棄ロスが多くなってしまうので、生産を一時中止し、スクリュー清掃をしましょう。
金型が高温のため、耐熱グリースを使用します。耐熱グリースの種類によっては、金型の開閉時に製品部に飛散することがあります。
金型の日常メンテナンスに合わせて、余ったグリースの拭き取りをしましょう。
飛散が激しい場合は、1日に数回と、あらかじめ回数を決めて、飛散する前にグリースを拭き取る清掃をして予防しましょう。
医療機器の試験機、トレイなどの肉厚製品は、充填時の流れがばらつくことがあります。累計ショットが増えてきてガスベントが詰まっている場合で、日常金型清掃では改善しない時は、金型のオーバーホールが必要です。また、原料ロットが変更になった場合は、変更点をマークして、即座に成形条件を調整しましょう。
ポリサルフォン樹脂は、高機能で、滅菌処理が繰り返し可能なことから、主に医療、検査機器に使用されています。高価な原料ですので、歩留まり率を意識することがポイントです。
ポリサルフォン樹脂の取扱い方法や成形加工時のポイント、よく発生する不良について説明しました。
上記例のような要素を考慮し、より生産性の高い成形加工を目指しましょう。