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射出成形における凹みとは?主な発生要因とそれぞれの対策

射出成形における凹みとは?主な発生要因とそれぞれの対策

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凹みとは

射出成形における凹みとは、成形品の表面にくぼみがある状態です。

ヒケや、ソリ、打痕、変形などの総称として使用されます。

成形品の形状や、成形条件の設定、型開閉時の離型、取出し設定などさまざまな要因で凹みが発生します。

凹みの事象をよく観察し、原因が何なのかを把握することが重要です。

凹みが発生しやすい箇所

凹みが発生しやすい箇所として、下記が挙げられます。

成形品の肉厚部

成形中の肉厚部は、冷却時間が経過後も熱を取り切れないことが多く、樹脂の収縮が大きいため、成形品表面がヒケやすいです。収縮分を補填する形で成形条件の調整を行うことで改善します。

保圧がかかりにくい複雑な形状部分

形状が複雑な部分は、保圧が効きにくいため、成形品表面がヒケることがあります。このケースでは、充填途中で流れが失速してしまい、末端まで充填しずらいことが要因となっていたりするため、金型温度や成形条件を調整し、樹脂の流動性を改善する必要があります。

離型時に真空になる箇所

型開閉や、突き出し時において、真空になる部分は、製品が引っ張られやすく、変形し凹みやすいです。

取出しチャックと接近する箇所

取出し時に製品と取出しチャックが接近するところは、機械のバラツキにより必要以上の力が製品面にかかり、凹みが発生することがあります。この場合は、どの設備に起因する凹み発生なのか、見極める必要があります。

凹み発生の要因と対策

射出成形加工における凹みの発生要因は、下記の4通りです。

成形品の形状に起因する凹み(ヒケ)

成形品の肉厚部やゲートの凹みは、樹脂の収縮によるヒケが原因です。保圧を上げたり、保圧時間を上げて、収縮分を補填することで改善します。

ただし、成形条件でカバーしても樹脂は収縮しますので、成形条件の調整は限定的です。

恒久対策として、成形品の形状を薄くしたり、金型に水管を足すなど、冷却能力を高めるための金型変更が効果的です。

成形条件に起因する凹み(ヒケ)

適正な射出条件でなかったり、冷却時間が短かいと、成形品の表面はヒケて凹みます。

複雑な形状の部分は、充填途中で流れが失速してしまい、末端まで充填しずらいことがあります。充填しずらい箇所は、十分に圧力がかからないためヒケて凹んでしまいます。

樹脂が末端まで流れやすくするために、金型温度や樹脂温度を上げたり、射出圧力や射出速度を上げることが効果的です。

ただし、他の場所も勢いよく充填されるので、バリやオーバーパックが発生することがありますので、バランスをみながら調整が必要です。

成形サイクルアップを目的に冷却時間を短縮する場合は、凹み(ヒケ)が発生しやすくなっているので注意が必要です。

冷却時間が短い成形品は、熱いまま取り出されるので、収縮が強く、時間が経ってから表面は大きくヒケてしまいます。冷却時間の変更の際は、事前に試作サンプルを採取しておき、冷えた時のヒケ状態を確認して、品質規格に収まっていることを確認してから、設定変更しましょう。

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離型・取出しに起因する凹み(変形)

離型・取出しに起因する凹み(変形)は下記の2通りです。

型開閉時やエジェクター動作に起因する凹み(変形)

金型の摺動で、成形品に力が加わると、成形品の一部が変形して凹むことがあります。

特に、成形品が真空になるときに、凹みが発生します。速い動作を避け、ゆっくり動作させることで、凹みが改善します。

取出しに起因する凹み(変形)

金型からの離型と取出しのタイミングが合わないと取出しミスが生じ、製品表面が変形してしまい、凹むことがあります。

金型から出たばかりの成形品は温度が高いので、変形しやすくなっており、取出しミスの影響を受けやすくなっています。

取出し位置とタイミングを点検し、修正することで改善します。

設定ポイントは下記の通りです。

  • 適正な位置で取り出しているか(型開き完了位置、取出し位置の確認)
  • 余裕をもって取り出せているか(エジェクター突き出し保持タイマー、取出しタイマーの確認)

原料に起因する凹み(ヒケ)

使用する原料によって、凹みやすさが変わります。

溶融温度や、流動性、収縮率、添加物の有無、着色剤など様々な要因によるものです。

1つの金型で異なる原料を使用する時は、双方が別を製品として考え、個々に成形条件を設定しましょう。

また、原料ロットによって、MFR(樹脂の流れやすさ)が異なるため、凹み方が変わります。原料ロットの変更点は、事前に把握し、凹みが強くなるようなら、対処しましょう。

凹みを流出しない為に

発生した凹み不良を、次工程、客先に流出しないために、発生した時点で発見・対処する仕組み作りが大切です。下記が流出対策の一例です。

初期検査

凹み不良は、連続で発生する不良ですが、断続的に発生することもあります。

特に、立ち上げ時は、成形状態が安定していないため、バラツキの影響を大きく受けます。

基準サンプルを基に、初期検査をしっかりと行い、不良発生がないことを確認しましょう。

また、油圧式の成形機は、油温が温まるまでに時間がかかります。立ち上げ前に油温のヒートアップをして、バラツキを抑える予防が効果的です。

抜き取り検査

成形中は、定期的にサンプルを採取して、成形品が品質規格内に収まっているか確認しましょう。時系列でサンプリングすることで、いつから凹みが発生したかや、凹みの程度がどう変化したかがわかり、不良品の識別に役立ちます。

まとめ

凹みについて、不良発生要因及び原因、不良対策についてまとめました。凹みの要因は、成形品の形状や、成形条件の設定、離型・取出し設定、原料など様々です。

発生した凹みの要因が何かをしっかりと見極めて1つづつ対策していくことが重要です。

凹み不良を見逃すことなく、高い成形加工技術の確立を目指しましょう。