コラム記事一覧arrow
エンジニアプラスチックとは

エンジニアプラスチックとは

injection-molding

エンジニアプラスチックとは

エンジニアプラスチックは、高い強度と耐熱性を持ち、主に工業用途に適した樹脂の総称です。高い強度を活かし、およそ40Mpa以上の引っ張り強さを持つ樹脂や、100℃以上の耐熱性、長い耐久性を有する樹脂が該当します。

高い強度や耐熱性を求められる自動車部品や、電気、電子部品などに使用されており、私たちの身の回りで無くてはならない素材です。

エンジニアプラスチックの種類・特徴

代表的なエンジニアプラスチックには下記があります。

樹脂名 特徴 用途 取扱い方法
ポリアセタール樹脂 (POM) 機械的強度が良く、耐摩耗性、摺動性、耐溶剤性に優れる 軸受ベアリング、ギヤ、ブッシュ、プーリー、戸車、配管継手部品、オイルタンク、エアゾール 材料乾燥温度: 80-90℃, 乾燥時間: 3-4時間, 加熱筒温度: 190-210℃, 金型温度: 60-80℃
ポリアミド樹脂 (PA) 靱性が良く、耐摩耗性、耐熱性に優れる エンジンカバー、マニホールド、吸気系部品、コネクター、スイッチ、ハウジング、日用雑貨、建築部材、スポーツ用具 材料乾燥温度: 80-120℃, 乾燥時間: 10-48時間, 加熱筒温度: 220-250℃, 金型温度: 20-80℃
ポリカーボネート樹脂 (PC) 透明性が高く、耐衝撃性、難燃性に優れる スマートフォンボディー、ケース、自動車のヘッドライト、レンズ部品、看板、防弾素材 材料乾燥温度: 120℃, 乾燥時間: 4時間, 加熱筒温度: 260-300℃, 金型温度: 85-110℃
ポリブチレンテレフタレート樹脂 (PBT) 電気絶縁性が良く、耐熱性、耐溶剤性に優れる ドアハンドルバルブ、ワイヤーハーネスコネクタ、ワイパー部品、コネクタ、ソケット、蛍光灯口金、コピー機器部品 材料乾燥温度: 120-130℃, 乾燥時間: 3-5時間, 加熱筒温度: 230-260℃, 金型温度: 40-80℃
変性ポリフェニレンエーテル樹脂 (m-PPE) 耐熱性が高く、耐クリープ性に優れ、硬質で粘り強い コネクタ、スイッチ、端子台、パソコン、コピー機、テレビ、エアコン、カメラ、時計 材料乾燥温度: 100℃乾燥時間: 2~4時間加熱筒温度: 240〜320℃金型温度: 60〜105℃

ポリアセタール樹脂(POM)

特徴 

機械的強度が良く、耐摩耗性、摺動性、耐溶剤性に優れる樹脂です。

耐摩耗性や、摺動性が良いことから、軸受ベアリングや、ギヤなど摺動部で使用されます。

ポリアセタール樹脂は、燃やすとホルムアルデヒド臭が発生します。

目や鼻を刺激し、人体に悪影響を及ぼしますので、取り扱いには注意が必要です。

用途

軸受ベアリング、ギヤ、ブッシュ、プーリー、戸車、配管継手部品、オイルタンク、

エアゾールです。

取扱い方法

  • 材料乾燥温度:80〜90℃(予備乾燥なしの場合もあります)
  • 乾燥時間:3〜4時間
  • 加熱筒温度:190〜210℃
  • 金型温度:60〜80℃

ポリアミド樹脂(PA)

特徴 

靱性が良く、耐摩耗性、耐熱性に優れる樹脂です。

粘りが強い上、表面が硬く摩擦に強いことから、自動車部品や、電気、電子部品で多く使用されます。別名は、ナイロンです。

ポリアミド樹脂は、大気中の水分に触れることで吸水するので、材料の保管方法が重要です。

用途

エンジンカバー、マニホールド、吸気系部品、コネクター、スイッチ、ハウジング、

日用雑貨、建築部材、スポーツ用具です。

取扱い方法

  • 材料乾燥温度:80〜120℃
  • 乾燥時間:10〜48時間(水分率による)
  • 加熱筒温度:220〜250℃
  • 金型温度:20〜80℃

ポリカーボネート樹脂(PC) 

特徴 

透明性が高く、耐衝撃性、難燃性に優れる樹脂です。

透明性を活かし、寸法精度や加工性が良いことから、スマートフォンのボディーや、レンズに使用されます。

ポリカーボネート樹脂は、透明であることから、異物や黒点は外観不良になります。

特にシリンダー内で発生する、異物や黒点には配慮が必要です。

シリンダー内において、滞留樹脂が炭化する黒点には、スクリュー清掃が有効です。

用途

スマートフォンボディー、ケース、自動車のヘッドライト、レンズ部品、看板、防弾素材

です。

取扱い方法

  • 材料乾燥温度:120℃
  • 乾燥時間:4時間
  • 加熱筒温度:260〜300℃
  • 金型温度:85〜110℃

ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)

特徴

電気絶縁性が良く、耐熱性、耐溶剤性に優れる樹脂です。

電気絶縁性が良いことから、自動車部品から電気、電子部品に使用されます。

ポリブチレンテレフタレート樹脂は、フィラーを配合することで、更に強度や耐熱性を高めることが可能です。

用途

ドアハンドルバルブ、ワイヤーハーネスコネクタ、ワイパー部品、コネクタ、ソケット、

蛍光灯口金、コピー機器部品です。

取扱い方法

  • 材料乾燥温度:120~130℃
  • 乾燥時間:3~5時間
  • 加熱筒温度:230〜260℃
  • 金型温度:40〜80℃

変性ポリフェニレンエーテル樹脂(m-PPE)

特徴

耐熱性が高く、耐クリープ性に優れ、硬質で粘り強い樹脂です。

寸法精度が良いことから電気、電子部品の精密部品に使用されます。

変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、PPEにHIPSを配合した、ポリマーアロイです。

エンジニアプラスチックの中では、比重が1.06と最も軽いです。

用途

コネクタ、スイッチ、端子台、パソコン、コピー機、テレビ、エアコン、カメラ、時計

です。

取扱い方法

  • 材料乾燥温度:100℃
  • 乾燥時間:2~4時間
  • 加熱筒温度:240〜320℃
  • 金型温度:60〜105℃

ハイクラス製造業人材のデータベースMillCrew。製造特化した経験やスキルの登録有。
貴社の課題解決に即戦力人材
【製造業特化】即戦力人材データベースMillCrew
詳しくはこちら

代表的な用途

自動車部品から電機、電子部品まで、主に工業用部品として使用されています。

  • 自動車部品:マニホールド、吸気系部品、ヘッドライト、レンズ部品、軸受ベアリングや、ギヤ
  • 電気部品:コネクター、スイッチ、ハウジング、コネクタ、スイッチ、端子台の電気器具
  • 家電製品:スマートフォンのボディー、パソコン、テレビ、エアコン、カメラ
  • 建材部品:戸車、配管継手、看板、防弾素材

エンジニアプラスチックの成形法

エンジニアプラスチックは、製品によって様々な方法で加工されます。代表的な成形法を解説します。

射出成形法

エンジニアプラスチックにおいて、最も使用される成形法です。シリンダーで加熱した樹脂を金型に流し込み、冷却して固めます。射出成形法では、大半のエンジニアプラスチックが使用可能です。

押出成形法

シリンダーで加熱された樹脂を、ところてんのように、金型ダイから吐出します。

その後、サイジングで形状を作り、水槽で冷却して固めます。短冊切りや、長物の成形品を生産するのに最適な成形法です。押出成形法では、エンジニアプラスチックの丸棒や、角棒を作るのに使用されます。

エンジニアプラスチックのメリット・デメリット

エンジニアプラスチックは、色々な性能を持ち合わせた高機能プラスチックです。数あるプラスチックの中で、物性は中間的な位置であり、成形性も優れています。

その物性は、「汎用プラスチック < エンジニアプラスチック < スーパーエンジニアプラスチック」の順に優れるとされています。

樹脂そのものに対して生産コストがかかっており、原料単価は高額ですが、妥当とも言えるほど高機能な樹脂です。

メリット

  • 高い強度がある
  • 耐熱性が高い
  • 軽量である
  • 大量生産が可能
  • 耐溶剤性が良い
  • 耐薬品性が良い
  • 曲げ、歪曲のクリープ性が良い
  • 成形法が多種である

デメリット

  • 原料コストが高い
  • 金型鋼材費が高くなる
  • 特定の薬品には侵されてしまう

今後の課題

エンジニアプラスチックは、主に工業分野を支える上で欠かせない素材です。2030年までに、プラスチック樹脂の市場需要は、年率5%ほどで推移していくとされています。

しかし、高機能が故に地球環境に与える影響が大きいことが課題になっています。
プラスチック製品の商品開発の時点から、その製品の廃棄や、再利用までの仕組み作りがポイントです。

エンプラのケミカルリサイクル


樹脂メーカーは、ライフサイクルの終わったプラスチック製品を回収し、化学分解する技術開発をスタートさせています。バージン材同等の品質を確保した、リサイクルが可能になってきています。
まだリサイクルコストが高いですが、資源のアップサイクルは、サステナブルな取り組みとして注目されています。

バイオマスエンジニアプラスチック


天然素材をプラスチックに配合する取り組みが、エンプラにも広がっています。
従来の石油由来100%で作っていたエンプラを、一定割合、植物性油に代替することで、高機能なバイオマスエンジニアプラスチックを作ります。
資源の枯渇や、世界情勢の影響で原油価格は今後上がり続けると言われている中、樹脂の安定共有に有効な活動です。

まとめ

エンジニアプラスチックは、高い強度と耐熱性を持ち、主に工業用の部品に適した樹脂です。高性能な特性を活かし、自動車部品から電気、電子部品まで、多岐に使用されています。今後は地球環境に配慮して、サステナブル活動を行うことが私たちの使命です。エンジニアプラスチックの特徴を良く理解して、日々の業務に活かしましょう。