射出成形加工における気泡とは、成形品の内部に小さな粒状の泡がある状態です。外観が悪いことや、強度が下がることが不良の理由です。成形品のどの部分に発生しているかによって、気泡の原因は異なります。まずは、事象品をよく観察したうえで、その原因とメカニズムを理解し、適切な対処をすることが重要です。
「ボイド」は主にプラスチックの冷却と固化過程で生じる収縮によって形成されます。材料が冷却されると体積が収縮し、それに伴って内部に小さな空洞が形成されます。ボイドは一般的に成形品の内部に見られ、成形品の機械的強度に影響を及ぼします。また、ボイドの存在は成形品の外観を損ねることがあり、特に透明なプラスチック製品では光学的な性質を損なう可能性があります。
一方、「気泡」は射出成形過程でのガスエントラップメント、つまりガスが閉じ込められることにより形成されます。これは通常、射出成形材料が完全に溶けていない状態で射出され、その中に空気が閉じ込められることにより起こります。気泡は成形品の表面近くでより頻繁に見られ、大きな気泡は製品の外観を大きく損ねる可能性があります。
射出成形において、金型内に充填される樹脂は、計量時に巻き込まれるエアーと、樹脂自体から発生するガスを含んでいます。
その樹脂が、金型の空間に残った空気を押し出す様に充填されます。
PLや、入れ子、エジェクターピンの隙間などのガスベントから、エアーとガスは抜けて行きます。
この時、ガスベントが機能しないと、成形品の内部にエアーやガスが取り残されてしまい気泡になります。
気泡は、ガス抜けの具合に左右される事象です。主に気泡が発生しやすい状況として、下記が挙げられます。
気泡が発生しやすい箇所は、下記の通りです。
金型に充填した樹脂が最後に行きつく流動末端は、金型内の空気と樹脂のガスが集まる箇所であるため、気泡が発生しやすくなっています。事前に金型ごとの流動末端を把握しておくことが大切です。
リブやボスを通過した樹脂がエアーを巻き込んでしまうため、リブやボスの反ゲート側に気泡が発生しやすくなります。こうしたケースでは、射出速度を下げる等、成形条件の調整が有効です。
累計ショット数が多くなるにつれ、ガスベントのつぶれた箇所や、ガスを巻き込んでしまう袋小路部は、気泡が発生しやすくなります。定期的なベント清掃や金型の見直しが対策になります。
多点ゲート金型において、それぞれのゲートから充填された樹脂が合わさるところは、逃げ場を失ったガスが、そのまま気泡になります。多孔質の素材の金型に変更する等が対策となります。
射出成形加工における気泡の発生要因は、下記の通りです。
金型内のエアーや溶融樹脂から発生するガスは、流動末端に集まります。ガスベントが綺麗な状態では、ガスはうまく抜けていきますが、ガスベントが詰まっていくと、ガス逃げは悪くなっていき、製品内部に気泡が発生します。
流動末端で発生する気泡には、定期的なガスベントの清掃が効果的です。ウエスやコットンに金型洗浄剤を塗布し、綺麗にふき取るようにしましょう。
直接金型に金型洗浄剤を吹き付ける方法は、ガス汚れを奥から引っ張ってきてしまい、汚れ不良につながりますので、注意が必要です。
日に1回や、各直で1回など、ガス汚れを清掃・除去して予防しましょう。
充填の途中でリブやボスといった障害物がある場合、その障害物を通り越した場所に気泡が発生しやすいです。充填中に一度分岐した樹脂が、再び合流する時に、ガスを巻き込むことが原因です。
リブやボス周辺の気泡には、成形条件の調整が効果的です。事象箇所を通過する時の、射出速度を下げることで、ガスの巻き込みが軽減します。射出速度の多段制御を活用しましょう。
ただし、射出速度を遅くすることで、別の箇所にショートや湯ジワが発生することがあります。成形条件の変更後は、良品規格に合致しているか?念入りな確認が必要です。
ガスベントのつぶれた箇所や、袋小路部は、ガス逃げが悪いため、製品内部に気泡が発生します。PLのガスベント清掃や、射出速度の調整など、組み合わせて対処することが対策となります。
それでも気泡が改善しない場合は、金型のガスベントの彫り直しや、入れ子を分割したり、多孔質の素材に置き換えるなど、ガスを逃げやすくする金型の設定変更が有効です。
ただし、金型の設定変更は、費用が高く、工事期間もかかるので、事前の客先承認・社内承認の上で、進めましょう。
発生した気泡不良を、次工程、客先に流出しないために、発生した時点で発見・対処する仕組み作りが大切です。下記が流出対策の一例です。
立ち上げ初期は、成形機・金型温度が安定していないため、製品はばらつきます。
1つの製品を見て良否を判断せず、複数を確認することが重要です。
気泡の初期検査ポイントは、樹脂温度・金型温度が安定してきた状態の製品を確認することです。特に、気泡の発生しやすい箇所を重点的に検査しましょう。
定期の時間や、勤務毎、生産ロット毎に、定時サンプルを採取し検査することが重要です。
定期時間ごとのサンプルを採取することで、発生した不良の時間変化が確認できます。
いつから気泡が発生したかがわかれば、不良品の範囲を特定しやすくなります。
気泡について、不良発生要因及び原因、不良対策についてまとめました。気泡の要因は、ガス逃げ不良や、エアーの巻き込み、金型の劣化など様々です。
発生した気泡の要因が何かをしっかりと見極めて1つずつ対策していくことが重要です。
気泡不良を見逃すことなく、高い成形加工技術の確立を目指しましょう。