射出成形における黒点とは、成形品に黒色異物が練り込まれる状態です。射出成形不良の中で、黒点は、一番発生率が高いといってもいい不良です。黒点の多くは、加熱筒内で炭化した樹脂に起因します。
黒点の発生率は、0%にはできません。しかし、適切な管理をすることで、その発生確率を限りなく0%に近づけることは可能です。以下で黒点の発生要因と対策、流出対策のポイントを解説していきます。
黒点が、発生しやすい箇所は決まっていません。成形品にランダムに発生します。
射出成形加工において、しばしば発生する黒点には、以下の3つが挙げられます。
・加熱筒内で炭化した原料による黒点
・原料に練り込まれてしまっている黒点
・連休後等における成形機再稼働時の黒点
加熱筒内で原料は、スクリューの谷間に沿って、圧縮混練されながら前方に進み、スクリューヘッド、逆止リング、スペーサーから構成される、スクリュー3点セットの複雑な形状の隙間を通って、溶融します。累計ショット数が増えると、滞留している原料が徐々に炭化していき、この炭化した樹脂が剥がれ落ち、製品に練り込まれることで、黒点が生じます。
加熱筒内で発生する黒点は、下記の箇所から発生します。
・ノズル
・スクリューヘッド
・逆止リング
・スクリュー圧縮部・計量部のフライト
加熱筒内の炭化物が少ない段階では、パージをして、炭化物を除去します。製品に黒点の練り込みが増えてきたら、一旦成形を停止し、パージをすることで回復します。
経時により、加熱筒内の炭化は進んでいきます。初めのうちは、黒点の発生率は少ないですが、次第に、発生確率は高まり、黒点の大きさが大きくなっていきます。黒点の発生頻度が高くなってきたら、パージ材を使用して炭化物を除去します。パージ材を使用することで、効率的に炭化物を除去できます。ただし、加熱筒内を完璧に綺麗にできるわけではありません。また、用いたパージ材が加熱筒内に残って、練り込み異物になることがあります。使用後は、しっかりとパージ材を抜きましょう。
パージ材を使用しても、黒点の練り込みが改善しない場合は、スクリュー分解清掃をしましょう。加熱筒内のスクリューを分解して清掃することで、炭化物を直接取り除くことができます。スクリュー分解清掃は、停止ロスが大きいですが、黒点は確実に除去でき、不良率は改善します。歩留まり率と不良率が最適になるように、黒点の発生を見越し、定数管理を行う問いして、スクリュー清掃を定期的に実施しましょう。
原料にもともと練り込まれていることがあります。原料メーカーの製造時に練り込まれてしまっているこのケースでは、成形条件や成形環境をいくら改善しても、効果がありません。
原料に黒点が練り込まれている場合は、原料ロットを変更して対応します。原料は、そのロットごとに、製造日時や製造プラントが異なります。ロットに由来する黒点の場合は、原料ロットを変更し、原因を取り除くことで改善します。当該ロットについては、原料メーカーに問い合わせをしましょう。
週末や長期連休の後、ヒーターを入れると、加熱筒内では、炭化物が多く剥がれ落ちます。念入りにパージしても、立ち上げから数時間のうちは、黒点が発生し続けます。必要に応じ、パージ材を使用したり、スクリュー分解清掃をしましょう。また、加熱筒温度をOFFせずに、保温に設定することで、黒点が一気に剥がれ落ちることを予防可能です。ヒーターを再投入の際は、念入りにパージを行うことが大切です。
発生した黒点不良が、次工程に流出しない様に、下記検査が有効です。
立ち上げ時は、品質規格に合格しているか確認することが重要です。黒点は、立ち上げから数時間で特に注意が必要な不良です。規定数の捨てショットをした後も、黒点がないかを意識的に確認しましょう。規格外の黒点が1つあるだけで、その成形品は不良品です。もしも、立ち上げから、数時間経っても黒点が収まらない場合は、パージ材でパージしたり、スクリュー清掃をするなど処置をして、確実に対応・対策を行いましょう。
定時か、各勤務毎に抜き取りサンプルを確認しましょう。黒点は、上述の立ち上げ直後数時間に加え、ショット数の増加に伴い、再度注意が必要な不良です。ショットを繰り返す中で、加熱筒内の滞留樹脂が徐々に炭化していくため、定期的にサンプル検査をすることで、採取時間ごとに、成形品の品質を担保することになります。発生した成形不良を時間別に管理するために、決められた採取時間を守りましょう。
黒点について、不良発生要因及び原因、不良対策についてまとめました。黒点は射出成形孤高において最も発生頻度が高い不良事象です。発生要因を、事前に対策し、黒点を見逃すことなく、高い成形加工技術の確立を目指しましょう。