穴の内面を精度良く仕上げるリーマ加工。リーマ加工は、穴の直径に対し±0.01mmの寸法精度が要求される精密な穴加工で用いられます。リーマは通常68枚の刃先を持ち、深円度の高い穴が得られます。また、複数の加工ステップを一つのリーマ工具を使ってまとめることにより、加工時間と手間を短縮することができます。
この記事ではリーマ加工で発生する課題と、下穴を無駄にしないために押さえておきたいポイントについて解説します。
リーマは、リーマ加工で使われる専用工具です。工具側面の切れ刃で穴の内面を擦りながら削り、穴の穴径・表面粗さを精度良く仕上げます。 リーマ加工で発生する課題には、以下のようなものがあげられます。
リーマはドリルと同じく、扱い方を誤ると折れやすい工具のひとつです。 工具折損の原因は下穴の加工不良や切粉の詰まり、バックテーパが小さい、食いつき部の摩耗が激しい、送りが高すぎるなどさまざまですが、比較的小径(φ20程度)の工具が多いため、特に過負荷による折れに注意が必要です。
リーマ加工では、僅かな工具の振れも面粗さ不良の原因となります。 工具の振れは主軸・ツールホルダー・切粉・切削条件など、さまざまな要因が重なり発生します。
リーマ加工は、ドリルによる穴あけ加工にくらべ高い寸法精度が要求されます。 そのため穴径不良の対策には、穴あけ加工以上の高い技術が求められます。穴径不良について、発生原因には以下のようなものがあります。
・工具径が大きい ・切削速度、送りが高すぎる ・スピンドルまたは工具の振れが正常でない ・食いつき部が短すぎる、ばらついている ・クーラントの油含有率が高すぎる ・下穴とリーマの中心があっていない
・激しく摩耗した工具 ・切削速度、送り速度が低すぎる ・薄肉ワーク ・加工後、ワークピースがスプリングバックする ・リーマ加工の削り代が小さすぎる
リーマ加工の工具折損や精度不良の改善には、以下のような対策があります。
工具折損を防ぐためには、切り込み量や切削条件の調整が欠かせません。 工具に掛かる負荷を減らしつつ、いかに切粉を排出するかがポイントです。
リーマの折損を防ぐためには、リーマの直径に応じた適切な取り代(リーマ代)が必要です。 下穴が小さい(=リーマの取り代が大きい)と、リーマにかかる負荷も大きくなり、工具折損の原因となります。 また下穴の曲がりや位置ズレもリーマ折損の原因となるため、前工程の下穴加工にも高い精度が求められます。
「回転速度」「送り速度」を調整し、切削抵抗を小さくすることで工具折損を防ぎます。 一般的に硬いワークや小径リーマの場合、送り速度を落とすことで工具に掛かる負荷を減らすことができます。 リーマの剛性やワーク種類に適した切削条件の選定が重要です。
加工点に確実にクーラントが届くように「供給量」「供給圧力」を調整し、切粉を流し出します。 特に深穴や止まり穴(貫通していない穴)のリーマ加工では、穴底に切粉が詰まりやすいため、油穴付きリーマなどを使い切粉の排出を促す必要があります。
面粗さを改善するためには、リーマの振れを抑制することが重要です。 コレットチャックやツールホルダなど、周辺機器の選定も必要となります。
一般的にマージンの幅を広げると面粗度は向上しますが、加工時の切削抵抗は増してしまいます。被削材に合わせた適切なマージン幅の指定をすることで面粗度の高い穴仕上げを実現することが可能です。具体的にはアルミ・銅合金・鋳鉄などの軟質材には厚めのマージン幅、高硬度鋼などに薄めのマージン幅が良いとされています。
リーマに芯ずれや振れが起こると、リーマ側面と穴の内面との接触が不均一になり、面粗さに影響します。 特に穴の内面に切削跡(カッターマーク)が発生している場合は、リーマに振れが起きているため、コレットチャックやツールホルダの締め直しが必要です。 リーマの振れを防ぐためには、工具の突き出し量を短くすることも有効です。
リーマの振れを最小限に抑えるためには、ツールホルダーの選定が重要です。 面粗さの要求精度が高い場合には、加工時の振れが生じにくい「焼きばめチャック」の検討も必要です。
チャンファー(食付き)は、加工はじめにワークに食い付くリーマ先端の切れ刃です。 チャンファーが振れてしまうと、リーマ側面が穴の内面に接触できず面粗さに影響します。
チャンファーの振れを抑制するには、コレットチャックやツールホルダによる確実な保持だけでなく、先端部の再研磨も欠かせません。
穴径の精度が低下する原因として多いのが工具振れや下穴精度のばらつきです。穴径の精度不良を改善するためには、温度変化の抑制や適切な取り代が欠かせません。
リーマ加工では、リーマ側面の切れ刃と穴の内面が高速で擦れ合います。 そのため加工時の温度変化が大きく、クーラントを使い接触面を潤滑しながら冷却する必要があります。 冷却が不十分な場合、精度不良だけでなく摩擦熱による金属の溶着などを引き起こすため注意が必要です。
下穴が大きくリーマの取り代が少ない場合、リーマ側面の切れ刃が穴の内面に十分に当たらず精度不良を起こします。 穴径やワーク材質に合わせて、適切な大きさの下穴をあけることが重要です。
リーマ加工には一定の工数がかかるため、厳しい公差の穴が本当に必要かどうか見極めることも肝心です。 部品の性能上問題がなければ、超硬ドリルを使った真円度の高い穴あけ加工で済ませるなど、リーマ加工を省略することも検討しましょう。
この記事ではリーマによる仕上げ加工で発生する課題と、下穴を無駄にしないための押さえておきたいポイントについて解説しました。
近年では自動車部品から、航空機部品・金型まで、部品精度の高度化からリーマによる加工ニーズもますます増加しており、リーマ加工は最終製品の品質を左右する重要な工程のひとつとなっています。