ポリエチレン(Polyethylene、以下PE)は、安価で加工性が高いことが特徴のプラスチック原料です。 射出成形、ブロー成形、インフレーション成形と様々な方法で加工され、日用品から工業品まで幅広く使用され、全プラスチックの内、使用量のシェアはNo.1です。
*参照:塩ビ工業・環境協会 - 「プラスチックの種類別生産量」
一般的に使用されるPEは、大きく2種類に分類されます。
フィルムやラップシートなどシート状に加工され、スーパーやコンビニのレジ袋、園芸用肥料のビニル袋、建設資材のラップ梱包剤としての用途が3割〜5割ほどです。上水、ガス配管部材として使用されることも多くあります。 ブロー成形において、ガソリンタンクに用いられ、射出成形においては、一般的には容器や日用雑貨などに使用されます。また、医療機器業界では、無害、無毒のため、体外診断薬のキットなどにも使用されます。
全プラスチック原料の内、一番安価なため、大量生産に向いています。 耐衝撃性や、高い機械的性質を必要としないバケツや容器など日用品に最適です。
耐水性、耐油性、耐薬品性に優れることから、医療分野において体外診断薬の容器に使用されます。 段取り時には、パージ剤として使用されます
熱安定性が良い為、温度差の大きい原料換えの際に、PEに一旦置き換えて加熱筒の温度を上下します。安価なPEでパージすることで、高額原料のパージロス率低減になります。
PE樹脂の成形加工における、原料・人日、成形条件の設定といった作業時に注意するポイントやよくある外観不良別の対策方法は以下です。
PEは、吸湿しない為、ホッパードライヤーや箱型乾燥機による予備乾燥は不要です。
PEは、成形加工しやすい樹脂ですが、その中でも注意すべきポイントを解説していきます。 以下が代表的な課題ごとの対策ポイントです。
製品表面にシルバーが発生することがあります。以下の2点が大きく影響します。
製品の外観を見ながら、背圧とサックバックのバランスを調整します。
また、充填の先端(フローフロント)がリブやボスを通過する際、ガスを巻き込むことでシルバーが発生することがあります。 充填速度を多段階に変化させることで改善します。
流動の合流地点では、ウエルドラインは避けられません。袋小路のガス逃げ不良にならぬ様、多段階で射出速度を調整しましょう。
ジェッティングと鼻タレは対比して発生します。サックバック量と背圧を調整することで改善します。ジェッティング、鼻たれ発生時の対応方法はそれぞれ以下です。
数万ショット成形してくると、ガス逃げ不良によるショートショット、ガス焼けが発生します。日常点検にて、パーティングライン、ガスベント部のガスヤニ清掃と、定期で金型オーバーホールが必要です。
PEは機能性の高さから容器に加工されることが多くあります。箱型の容器は、ソリが強く発生することがあります。ソリの原因は、樹脂特有の収縮する性質です。金型内の冷却時間不足や、金型温度調節機の温度設定などが原因です。冷却時間を変化させることでソリが改善することがあります。また、ソリが発生している面の金型冷却水回路を分け、別温度で冷却水を運転することで改善することがあります。これは、温度差を付けることで収縮を変化させることが目的です。
成形中に、金型冷却配管が詰まり流れが悪くなると、金型内で十分に冷却されず、熱いまま取り出されます。すると、製品は収縮が強くなり、寸法が小さくなります。また、結晶性樹脂のため収縮率が高い特徴があります。
特に、医療部品の多数個取り金型では、数万個単位で一つの製品受け箱に成形後保管されます。この時、もし1つのキャビティで不良が発生すると、全品検査が必要となり、製品受箱内から選別は難しい場合は、箱単位で不良になってしまいます。 スペースや予算の都合により全てのキャビティを1つの製品受け箱で受ける必要がある場合は特に、タイムサンプルを採取して全キャビティに問題がないか確認が重要です。
全プラスチック原料中最も安価なPEは、一番使用される原料です。 成形性はとても高く、扱いやすい原料です。結晶性樹脂のため、収縮率は高いので、収縮後の寸法が基準値内に入る様にタイプサンプル採取しモニター管理が重要です。 上記の例のような要素を考慮し、より生産性の高い成形加工を目指しましょう。