ポリプロピレン(Polypropylene、以下PP)は、プラスチック原料の内、トップレベルの軽さと、安価で加工性が高いことが特徴のプラスチック原料です。 ポリエチレンと似ていますが、表面の光沢に優れ、傷が付きにくく、PEより剛性の強い原料です。 日用品から工業品まで幅広く使用され、全プラスチックの内、使用量のシェアはポリエチレンに次ぐNo.2です。
参照:塩ビ工業・環境協会 - 「プラスチックの種類別生産量」
安価で軽量、機能性も高いことから日用品から工業部品まで様々なジャンルで使用されています。 自動車、家電などの工業部品や、容器コンテナなどにも使用されます。 日用品や雑貨などにも広く使用されます。 人体に安全なため、医療機器にも使用されます。
全プラスチック原料の内、軽量、安価なため、大量生産に向いています。
耐衝撃性や、機械的性質も高く、PEを強化した様なプラスチック原料です。 外観表面に光沢があります。 耐水性、耐油性、耐薬品性に優れることから、医療・研究分野においては、注射器や検査器具などに使用されます。
PPMは流動性が良く、外観もきれいに仕上がります。機能的にも強いことから多くの製品に使用されます。 そんなPPの成形時のポイントは下記の通りです。
PPは吸湿しないため、ホッパードライヤーや箱型乾燥機による予備乾燥は必要ありません。
200℃前後に設定します。糸引きが強い時は、加熱筒ノズル温度を下げます。
20〜40(〜80)℃に設定します。金型温度は製品表面の外観に大きく影響します。金型温度が低いと、流れが悪くなり、ショートショット、湯じわの原因になります。
一般的には扱い易い原料であり、多くの業種で様々な製品に加工されます。
工業系では、主材PPに炭素繊維、添加剤、対候材、着色剤などが混合されます。 その影響で、ガスの発生が強くなったり、流動が悪くなることがあります。
使用する原料、金型の構造に合わせてポイントを押さえていきましょう。
流動の合流地点では、ウエルドラインは避けられません。袋小路のガス逃げ不良にならぬ様、多段階で射出速度を調整しましょう。
量産中に金型の消耗により、経時的にバリが大きくなっていきます。PLの合わせ面、特に流動末端やスライドの合わせ面は比較的速く消耗してきます。突発でバリが発生するわけではなく、徐々にバリが大きくなります。
バリが品質規格を超えてしまう前に、射出速度、射出圧力、保圧を下げたり、計量値の調整が必要です。また、成形条件で調整できなければ、バリ箇所を溶接、削り直し当たりを修正する金型修理が有効です。
PPは収縮率が大きいため、成形品の肉厚部にヒケが発生しやすいです。保圧を高め、収縮分を補充することで改善します。保圧1段で大きな保圧をかけるとバリが発生することがあるので、多段階に保圧をかけてヒケを調整します。また、ゲートシール時間以上に保圧をかけても製品部には効かず、ただサイクルが伸びるだけですので、注意が必要です。
ジェッティングと鼻タレは対比して発生します。サックバック量と背圧を調整することが必要になります。 ジェッティング発生時は、サックバック量を下げる、または背圧を上げることで、また、鼻タレ発生時は、サックバックを上げる、または背圧を下げることで改善が期待できます。
数万ショット成形してくると、ガス逃げ不良によるショートショット、ガス焼けが発生します。日常点検にて、パーティングライン、ガスベント部のガスヤニ清掃と、定期で金型オーバーホールが必要です。
成形中に、金型冷却配管が詰まり流れが悪くなると、金型が十分に冷却されず製品は寸法が小さくなります。また、結晶性樹脂のため収縮率が高い特徴があります。特に、医療部品の多数個取り金型では、「数百ショットで、10,000個/袋に梱包する」といった梱包仕様となることが多く、そのうちの1キャビが不良になった時、選別抜き取りが困難になり大量廃棄に繋がります。こうしたケースでは特に、タイムサンプルを採取して全キャビティに問題がないか確認が重要です。
全プラスチック原料中最も軽量なPPは、安価で機械的性質が高いため、広く使用される原料です。 成形性はとても高く、扱いやすい原料です。 結晶性樹脂のため、収縮率は高いので、収縮後の寸法が基準値内に入る様にタイプサンプル採取しモニター管理が重要です。 上記の例のような要素を考慮し、より生産性の高い成形加工を目指しましょう。