ポリカーボネート(PC)は、ガラスの様に透明な樹脂です。ポリカとも略されること別名有機ガラスと呼ばれるほど透過率の高い素材です。
PC素材は耐衝撃性、耐久性、耐熱性、成形性に優れているのが特徴です。高機能なポリカーボネートはエンジニアプラスチックの代表的な素材で、その耐衝撃度は、プラスチック界で最高クラスです。ハンマーで叩いても簡単には割れません。日用品から工業部品まで、様々な分野で広く使われています。
先述の通り、ポリカーボネートの性質 / 特徴を活かして、日用品から工業部品まで素材として幅広い需要があります。PC樹脂の性質を踏まえた具体的な用途は以下の通りです。
ポリカーボネート (polycarbonate) とアクリル板 (acrylic sheet) は同じプラスチックですが一部特製や用途が異なります。
例えばポリカーボネートは耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性に優れており、建築や自動車、電気・電子機器など幅広い用途に使用されます。ただし、透明度はアクリル板に比べ劣ります。比べてアクリル板は透明度が高く、耐水性、耐酸化性に優れています。展示用、サイン、看板などの広告、展示デザインに使用されます。ただし、耐衝撃性や耐熱性はポリカーボネートに比べ劣ります。
ポリカーボネートの成形加工における、原料の準備、成形条件の設定といった作業時に注意しておきたいポイントやよくある外観不良別の対策方法は以下です。
成形加工に係る不良発生の防止を目的として、各種作業時に押さえておきたいポイントには様々ありますが、以下の作業においての不手際は不良に直結しやすいため、注意が必要です。
成形前に予備乾燥が必要です。(120℃で4時間) 未乾燥のポリカーボネートは、成形するとシルバーストリークが発生します。
300度前後に設定します。糸引きが強い時は、加熱筒ノズル温度を下げます。
80度以上に設定します。金型温度が低いと、流れが悪くなり、ショートショット、湯じわの原因になります。
また、ボリカーボネートはその特徴である透明度の高さから発生しやすい外観不良が存在します。以下が代表的な課題ごとの対策ポイントです。
高速で充填するとシルバーが出やすい。
金型内の構造が複雑でボスやリブを巻き込む時は、要注意です。
透明度の高いポリカーボネートは、練り込み異物が目立ちやすく、また、加熱筒設定温度が高いため、スクリューフライト部、先端スクリュー3点セットに滞留した樹脂が炭化していき剥離することがあるので注意が必要です。定期的に、パージ材でパージするか、スクリュー分解清掃を実施しましょう。
ポリカーボネートから、溶融温度が低い原料に換える際、抜けが悪く残ってしまうことがあります。
ポリカーボネートは、きっちり樹脂替えが必要です。安価なPPや、PSで一大量にパージし、次の原料に置き換えるか、パージ材をうまく活用しましょう。
ノズル設定温度を下げることで改善します。
また、サックバック、背圧を調整することで調整します。
多点ゲート金型の流動が合わさる点や、リブ、ボスを巻き込む点に、ウエルドラインが強く発生する時は、充填速度を下げてガスをうまく逃がすことでウエルドラインが弱くなります。
逆に、速度を速くして、分岐した樹脂が冷える前に合流させることで改善することもあります。
ポリカーボネートは透明度が高いため、離型傷が付きやすいです。事象品を確認し下記を点検調整します。
・保圧を掛けすぎていないか
・抜け勾配のバランスが悪くないか
・エジェクタースピードが速すぎないか
透明度が高いので、肉厚部の真空ボイドが目立ちます。保圧力、保圧時間の調整を基本とします。それでも改善しない時は、金型に肉盗み(ヒケぬすみ)を加工することが効果的です。
充填速度が低くなると、流動の先端(フローフロント)が湯じわになります。事象箇所の充填速度を上げるか、金型にガスベントを加工することで改善します。
取り出し機の吸着パッドが汚れていることが原因により、製品表面が汚れることがあります。吸着パッドの定期清掃が必要です。
代表的なエンジニアプラスチック素材に挙げられる、ポリカーボネートは耐衝撃性、耐久性、耐熱性、成形性に優れています。一方で、その特徴が故に成形加工の際は様々な点に注意が必要となる素材でもあります。上記例のような要素を考慮し、より生産性の高い成形加工を目指しましょう。