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微小チッピングの検知

微小チッピングの検知

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背景

工作機械を使用した切削加工では、切削工具の摩耗や折れ、欠損、チッピングなどの工具異常が発生することがあります。これらの工具異常に気付かずに切削加工を続けると、不良品の排出につながります。そのため、製造現場では生産中にこれらの工具異常をリアルタイムで検知する技術が求められています。

特に、チッピングは切削工具の刃先の一部が微細に欠ける現象であり、目視による判別が困難な異常の一つです。これにより、加工面の形状が意図せず変化し、製品の寸法精度が低下するため、不良品の原因となります。

工具異常が発生すると、切削工具にかかる負荷が通常と異なる変動パターンを示します。この変動パターンを捉えることで、工作機械の各モータに流れる電流から異常を検出し、直接的な観察を行わずに工具異常を検知することが可能です。

この技術を活用し、モータに流れる電流から微細なチッピングを検知する実験を行いました。

図1.チッピング

実験方法

同じ形状の製品を繰り返し加工する際、切削工具にかかる負荷の変動パターンはサイクルごとに類似する傾向があります。したがって、各サイクルの電流データも同様の変動パターンを示すと予想されます。この原理を応用し、通常とは異なる電流データの変動パターンを検出することで、工具異常の発生を判断できます。


この方法を利用して、工作機械の各モータにクランプ式電流センサを設置し、同じ製品の切削加工を60回繰り返し行い、その際の電流データを収集しました。その後、切削工具にかかる負荷の変動パターンを推定するために、1サイクルごとの切削加工時の電流データを重ね合わせ、比較分析しました。

図2.実験イメージ

結果

図3.サイクル波形60回分の重ね合わせ

実験から得られたデータを図3に示します。

図中の青線と赤線はそれぞれ、正常時とチッピング発生時の電流データを表しています。

図4.チッピングが発生した区間の拡大図

チッピングが発生した時間帯の電流データの表示スケールを拡大したものを図4に示します。これより、チッピング発生時の電流データがわずかに異なる変動パターンを示すことが確認できます。この変動パターンは、従来の電流値に対する閾値判定では検知することができません。そのため、新たな異常検知アルゴリズムの開発が必要でした。

開発した異常検知アルゴリズムは、チッピング発生時に現れる複数の変動パターンを電流データから特徴量として抽出し、統計的特性に基づいて判定を行います。このアプローチにより、従来の方法と比較して高精度なチッピング検知が可能になります。

図5.チッピング時の異常度の変化

この異常検知アルゴリズムによるチッピング発生の検知結果を図5に示します。図中の青点と赤点はそれぞれ正常時とチッピング発生時のる異常度を示し、赤線は統計的に算出された判定基準値を表しています。

異常検知アルゴリズムが電流データから算出した異常度は、正常時の1~59サイクル目では同程度の値を示していますが、チッピング発生時の60サイクル目では急激に上昇していることが確認できます。このように、電流データではわずかにしか現れなかった変動パターンの違いが、開発した異常検知アルゴリズムを使用することで顕著になり、高精度なチッピング発生検知が可能となります。

まとめ

本技術は、目視での判別が困難な微小なチッピングの発生を検知する能力を備えています。この新しいアプローチにより、加工不良の早期発見が可能となり、生産プロセス中に不良品が連続して排出される事態を効果的に防止することが可能になります。MAZINはこの技術を活用して、生産現場の効率化と品質向上を目指し、今後も先進的な実験を推進していきます。

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