製品を連続的に成形する射出成形では、不良品の発生を抑制することができず、成形品を1点1点手作業で検査する検査工程に大きな工数をかけている現場が多くあります。各種の成形不良を予測することができれば、不良が発生すると予測された1ショット時に成形された不良品を、ロボットと連携して自動ピックアップすることができ、検査工数の大幅な削減に役立てることができます。
株式会社MAZINでは、生産工程単位で存在する生産課題を解決するAIの開発を行っています。射出成形工程においても、技能承継や生産効率の改善といった課題感に焦点をあて、不良検知や成形条件調整の自動化等に活用されるアルゴリズムの開発を目的に各種実験・分析に取り組んでいます。
今回は多数個取りの射出成形において、不良検知の検証を行いましたので、その取り組みをご紹介します。
射出成形では、複数のキャビティを備える金型に樹脂を射出して複数個の成形品を一度に成形する多数個取りの成形が行われています。多数個取りでは、各キャビティへの樹脂の充填がアンバランスになりやすく、不良が発生しやすいという課題があります。
今回の取り組みでは、開発した成形不良検知アルゴリズムが多数個取りにおける不良にも適用可能であるかについて検証を行いました。
多数個取り金型に取り付けた圧力センサにより、成形時の型内圧力をそれぞれ取得し、時系列波形をデータ分析することで、各キャビティのそれぞれで発生する不良を検知可能であることを実証しました。
4つのキャビティを備える多数個取りの射出成形にて、ポリエステル系樹脂を成形し、成形時の圧力波形を成形不良検知アルゴリズムで解析することで、ショートショットとキズの不良を検知できるかについて実験を行いました。
成形品:産業用プラスチック部品
材料:ポリエステル系樹脂
金型:4個取り
成形不良検知アルゴリズムで解析を行った結果、以下の図に示すように、ショートショットやキズが発生したときの成形品の品質を示す指標の値が、良品の値から大きく乖離したことから、ショートショットとキズの検知が可能であることが確かめられました。
今回の取り組みにより、弊社が開発した成形不良検知アルゴリズムが多数個取りの射出成形においても効果を発揮することが確かめられました。
今後は材料、成形品、不良種別のバリエーションに対して、不良検知の実績を増やして参ります。