切削加工によって製品を量産する現場では、切削中に工具が折損し、折損したことに気づかずに加工を続けてしまい、加工が正しく行われなかった不良品が連続的に生産されてしまうという課題があります。
工具の状態をモニタリングし、折損したことをリアルタイムで検知することができれば、不良品の生産を最小限に抑えることができます。
株式会社MAZINでは、生産工程単位で存在する生産課題を解決するAIの開発を行っています。切削加工においても、技能承継や生産効率の改善といった課題感に焦点をあて、工作機械に電流センサをクランプし、切削トルクと相関関係にある電流値に基づいて工具状態のモニタリングをするアルゴリズムの開発を目的に各種実験・分析に取り組んでいます。
切削加工では、被削材としてアルミが用いられるケースが多くあります。アルミを切削加工した際に、工具の折損を捉えられるかを実験した取り組みをご紹介します。
今回ご紹介する取り組みでは、アルミを切削加工する際に電流センサを用いて取得した電流波形から工具の折損異常を捉えられるかを確認することを目的としています。
新品工具、わずかに折損した工具(折損(小)工具)、大きく折損した工具(折損(大)工具)を用いて以下のような実験環境及び加工条件でアルミを切削加工した際に、電流センサで波形データを取得し、新品工具の電流波形と比較して、折損(小)工具と折損(大)工具の電流波形に違いが現れるかを明らかにしました。
3通りで加工した際に取得した電流波形を重ねて、波形に違いが現れるかを可視化したところ、新品工具の電流波形(青線)と比較して、折損(小)工具(オレンジ線)と折損(大)工具(緑線)の電流波形は値が大きくなる方向へシフトする結果となりました。
値の差は小さいものの、独自開発したアルゴリズムを用いれば異常が生じたと判定できる可能性が高いです。
今回、φ6と径の小さい工具を使用し、切削トルクは比較的小さいものの、電流波形には違いが見られました。
工具径が大きくなるほど切削トルクが大きくなり、折損が生じたときに電流値により違いが現れやすくなるため、φ6より大きい径の工具でのアルミ切削加工においても折損を検知できる可能性が見えております。
今後は実際の加工現場の環境に近い条件でのデータを取得し、異常検知が可能であるかの知見を蓄積して参ります。
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