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リサイクル材の取り組み

リサイクル材の取り組み

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背景

本実験は、株式会社MAZINと株式会社日立ハイテクが共同で行い、リサイクル材料を使用した成形品の品質安定化を目指すものです。現在、サステナブルデベロップメントの世界的な潮流に伴い、環境配慮型素材への注目が集まっています。これにより、バージンプラスチックをリサイクルプラスチックで代替する動きが広がりつつあります。特に、欧州を中心としたリサイクルプラスチックの使用を法律で義務づける取り組みが進められており、メーカー各社は新たな法規制への対応を迫られています。リサイクルプラスチックには、市場に出回る前の段階で発生する工場の端材などを再利用したPre-Industrial-Recycledプラスチック(PIRプラスチック)と消費者が使用後に回収されるPost-Consumer-Recycledプラスチック(PCRプラスチック)の2種類が存在します。

図1.リサイクルプラスチック

さらなる環境配慮により、PCRプラスチックの使用が推奨されています。しかし、様々な製品から回収されるPCRプラスチックは、使用期間や製造メーカー、元の製品の種類によって、物性が異なるため、品質にばらつきが生じる問題があります。加えて、所望のプラスチック以外のものや不純物の混入も懸念されており、同一物性のPCRプラスチックだけを集めることは困難です。この物性のばらつきを抑えるために、バージンプラスチックにPCRプラスチックを数%から数十%混合する手法が採用されています。しかし、今後の法規制への対応や、特性のばらつきが少ない高品質PCRプラスチックの入手の難しさを考慮すると、PCRプラスチックの使用比率を高める必要があります。こうした状況下では、ロットごとの特性ばらつきが大きな問題となり、成形条件が一定であっても、ロットが変わるたびに不良品が発生する恐れがあります。この問題に対処するために、PCRプラスチックのロットごとの特性ばらつきを分析する実験を実施しました。

実験方法

本実験は、株式会社ホリゾンの協力のもと、プリンタ用紙ガイドの成形実験を行いました。3種類の異なるロットのリサイクルABS(PCR)を使用し、各ロットに対して同一の成形条件で100ショットずつ成形しました。金型内圧センサで金型内の樹脂圧力を計測し、得られたデータから特徴量を抽出しました。この特徴量を基に、ロット間の物性のばらつきを定量評価しました。

図2.実験条件

結果

実験で得られた金型内圧センサデータから、成形品の品質への寄与率が高いと思われる2つの特徴量(以下Feature 1、Feature 2とする)を選定し、図3の散布図を作成しました。

図3.リサイクルABSのロットごとの特性ばらつき

この図から、ロットごとに異なるクラスタが形成していることが確認できます。これは、成形品の品質がロットによって変動することを示しています。特に、クラスタの中心点の分布に着目すると、ロット間での品質の違いが明らかになります。

したがって、ロットが変わるたびに成形品質の一貫性が損なわれる可能性が高いと言えます。

まとめ

今回の実験により、PCRプラスチックのロットごとに品質のばらつきがあることが確認されました。この結果を踏まえると、同一の成形条件下での連続生産では、ロットによるばらつきに十分対応しきれず、不良が発生するリスクが高まることが明らかになりました。この問題への解決策として、MAZINが開発中の射出成形AIをを活用することで、ロットごとのばらつきに合わせて成形条件を自動調整し、各クラスタの中心を一致させることが可能になります。これにより、リサイクルプラスチックを使用しても、品質の揺らぎを最小限に抑え、安定した生産が実現できるようになります。現在、MAZINではこのAIシステムの開発を進めており、その実用化に向けて取り組んでいます。

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